付き合ってあげてもいいかな 3巻 レビュー：初恋の影に揺れる心を描く感情的傑作

作品概要

タイトル： 付き合ってあげてもいいかな
作者： たみふる
出版社： 小学館（裏サンデー女子部）
発売日： 2019年11月
巻数： 3巻 ※シリーズ全14巻完結

あらすじ

すべてを知りたい、知られたくない複雑な感情を抱えるみわと冴子。全てを委ねてほしいみわと、自分をさらけ出すことができない冴子の間にもどかしい気持ちが漂います。
そんな中、高校の同窓会を控えて初恋の先輩への想いが募るみわの心は一層複雑になり、二人の関係にも微妙な変化が訪れます。恋愛の深層にある複雑な感情と向き合う、リアルラブストーリー第3巻です。

見どころ

過去の恋への複雑な感情

高校時代の初恋の先輩という存在が、みわの現在の恋愛にどのような影響を与えるかが丁寧に描かれています。過去の想いと現在の恋愛感情の間で揺れるみわの心理状態は、多くの読者が共感できるリアルな描写となっています。同窓会という設定を通じて、過去と現在が交錯する瞬間の繊細な表現が印象的です。

相手を理解したいというもどかしさ

「全てを委ねてほしい」みわと「自分をさらけ出すことができない」冴子の対比が、この巻の核心となっています。恋人同士でありながら、完全にはわかり合えない距離感や、相手をより深く知りたいという欲求と、それに応えられない複雑さが見事に表現されています。

身体的親密さへの踏み込み

「抱きたいの。抱かせてほしい。…だめ…？」という台詞に象徴されるように、精神的な結びつきから身体的な親密さへの発展が描かれます。この部分の描写は非常に繊細で、押し付けがましくなく、二人の関係の自然な深化として表現されています。

キャラクター成長の描写

みわの内向的で完璧主義的な面と、冴子の表面的な明るさの奥にある複雑さが、より深く掘り下げられます。二人それぞれが持つ恋愛観や人生観の違いが、関係性に与える影響が詳細に描かれており、キャラクターの立体感が増しています。

作者の特色・技法

たみふるさんの心理描写の技術が最も光る巻と言えます。表情の微細な変化や、言葉にならない感情を視覚的に表現する能力が際立っています。特に、過去への想いと現在の恋愛の間で揺れる心理状態の描写は圧巻です。コマ割りやページ構成も、読者の感情に寄り添うような工夫が随所に見られます。

ジャンルとしての評価

百合・ガールズラブジャンルにおいて、表層的な関係描写を超えて恋愛の本質的な複雑さに踏み込んだ作品として評価できます。同性愛特有の問題だけでなく、恋愛全般に通じる普遍的なテーマを扱っているため、ジャンルを問わず多くの読者に響く内容となっています。恋愛漫画としての完成度も非常に高いレベルです。

総合評価

★★★★★ 5/5

シリーズ中でも特に感情的な深みのある巻として、読者の心に強く残る内容です。過去と現在の恋愛感情が交錯する複雑さと、それを乗り越えようとするキャラクターたちの成長が見事に描かれています。恋愛漫画として最高水準の心理描写を提供する、シリーズの転換点となる重要な巻です。

こんな人におすすめ

• 恋愛の複雑さをじっくり味わいたい方
• 過去の恋愛が現在に与える影響に興味がある読者
• 心理描写重視の深い作品を求める方
• 恋人関係の発展過程を丁寧に描いた作品が好きな方