付き合ってあげてもいいかな 4巻 レビュー：関係の危機と真実に向き合う感動回

作品概要

タイトル： 付き合ってあげてもいいかな
作者： たみふる
出版社： 小学館（裏サンデー女子部）
発売日： 2020年3月
巻数： 4巻 ※シリーズ全14巻完結

あらすじ

3巻で高まった複雑な感情を背景に、みわと冴子の関係が重要な局面を迎えます。初恋の先輩への想いが整理されていない状況で、二人の恋人関係にも微妙な変化が生まれ始めます。
お互いの本当の気持ちと向き合わざるを得ない状況の中、果たして二人は自分たちの関係を見つめ直すことができるのでしょうか。恋愛の真実に迫る、感情的にも重要な第4巻です。

見どころ

関係性の転換点を迎える二人

4巻では、それまで築いてきた二人の関係が大きな転換点を迎えます。順調に見えた恋人関係の底に潜む問題が表面化し、みわと冴子はお互いの本当の気持ちと向き合うことになります。この過程で見せる二人の心の動きは、読者の感情を強く揺さぶります。

みわの複雑な心理状態

雑踏で冴子の笑顔を見かけるシーンは特に印象的です。自分がいない場所で楽しそうにしている恋人を見て、「自分はこの人を不幸にしているのではないか」と感じるみわの心境が、背中の寂しげな描写とともに見事に表現されています。このシーンは読者にも深い印象を残します。

恋愛の現実的な困難さ

理想的な恋愛関係だけでなく、現実の恋愛に伴う困難さや複雑さが正面から描かれています。相手を愛しているからこそ生まれる不安や、自分の感情を整理できない状況など、多くの人が経験する恋愛の真実が丁寧に表現されています。

キャラクター成長の重要な段階

みわの自己犠牲的な愛情と、冴子の素直な性格が、この巻では異なる角度から描かれます。二人それぞれが恋愛において成長していく過程が、説得力のある形で描写されており、キャラクターの深みがさらに増しています。

作者の特色・技法

たみふるさんの技術が最も発揮されている巻の一つです。特に心理的な距離感を表現する画面構成が秀逸で、同じコマに描かれていても心の距離を感じさせる技法が効果的に使われています。表情の描写も一層繊細になり、言葉にならない感情を読者に伝える力が向上しています。背景の使い方も巧みで、キャラクターの孤独感や不安感を演出しています。

ジャンルとしての評価

百合・ガールズラブというジャンルにおいて、恋愛の美しい面だけでなく、現実的な困難さまで包括的に描いた作品として非常に価値があります。同性愛特有の悩みを扱いながらも、恋愛全般に通じる普遍性を持っているため、ジャンルを超えて多くの読者の共感を得られる内容です。恋愛漫画としての質の高さを証明する巻と言えるでしょう。

総合評価

★★★★★ 5/5

シリーズの中でも特に感情的な深みと完成度の高さを誇る傑作巻です。恋愛関係の複雑さを正面から描きつつ、キャラクターの成長と心の変化を見事に表現しています。読後に深い余韻を残す、恋愛漫画として最高レベルの作品です。この巻を読んだ後は、続巻への期待がさらに高まることでしょう。

こんな人におすすめ

• 恋愛の現実的な困難さを描いた作品を求める方
• 深い心理描写と感情表現を重視する読者
• キャラクター成長の過程をじっくり追いたい方
• 恋愛の真実に迫る重厚な作品が好きな方