付き合ってあげてもいいかな 13巻 レビュー：元恋人同士の新たな関係を描く再出発

作品概要

タイトル： 付き合ってあげてもいいかな
作者： たみふる
出版社： 小学館（裏サンデー女子部）
発売日： 2024年10月
巻数： 13巻 ※シリーズ全14巻完結

あらすじ

「あなたと笑いあえるのがこんなにも嬉しい。」付き合い続ける未来を選べず優梨愛と別れた冴子と、環との別れを乗り越えて前に進むことを決めたみわ。
「あたしも。まだ帰りたくない！このままどっか行こ！」オール明け、元恋人同士の無計画旅行が始まります。名付けがたい関係のあわいを描く、第13巻です。

見どころ

元恋人同士の新しい関係性

それぞれのパートナーと別れを経験したみわと冴子が、元恋人同士として新たな関係を築いていく様子が美しく描かれています。恋人でも友達でもない、名付けがたい特別な関係性は、多くの人が経験する複雑な感情を見事に表現しており、読者の心に深く響きます。二人の自然な距離感と心地良さが印象的に描写されています。

無計画旅行という自由な時間

「このままどっか行こ！」という冴子の提案で始まる無計画な旅行は、二人の関係性を象徴する重要なエピソードです。計画性を重視するみわが、冴子の自由さに流される様子は、彼女の成長と変化を示しています。オールという非日常的な状況から始まる旅行が、二人にとって特別な意味を持つことが丁寧に描かれています。

それぞれの別れと成長の過程

優梨愛との別れを選んだ冴子と、環との関係に区切りをつけたみわの、それぞれの心境が深く掘り下げられています。別れの痛みを乗り越えて前に進もうとする二人の姿は、人間的な成長を感じさせ、読者に勇気を与えます。特に、別れを通じて学んだことが次の関係にどう活かされるかが注目されます。

「笑いあえる」ことの価値

「あなたと笑いあえるのがこんなにも嬉しい」という表現は、恋愛関係の本質を表しています。複雑な恋愛感情を超えて、純粋に相手との時間を楽しめることの価値が強調されており、恋愛の新しい形を示唆しています。二人の自然な笑顔と会話が、関係性の良さを物語っています。

作者の特色・技法

たみふるさんの関係性描写の技術が最高レベルに達している巻です。特に、元恋人同士という微妙な関係を描く際の繊細なバランス感覚が見事で、読者は二人の複雑な感情を自然に理解することができます。また、旅行という非日常的な設定を使って、キャラクターたちの本音を引き出す構成力も優れており、物語に深みと自然さを与えています。

ジャンルとしての評価

百合・ガールズラブジャンルにおいて、恋愛関係の「その後」と「新たな始まり」を描いた革新的な作品です。従来の恋愛漫画では描かれることの少ない、別れた後の関係性の再構築というテーマを正面から取り上げており、ジャンルに新しい可能性を提示しています。恋愛の多様性と人間関係の複雑さを表現した、成熟した作品として高く評価できます。

総合評価

★★★★★ 5/5

シリーズのクライマックスにふさわしい、感動的で示唆に富んだ巻です。元恋人同士の新しい関係性という難しいテーマを、美しく自然に描いており、読者に深い感動と共感をもたらします。最終巻への完璧な布石となっており、シリーズ全体の質を高める重要な一巻として、多くの読者の心に残る内容となっています。

こんな人におすすめ

• 元恋人同士の複雑な関係に興味がある方
• 恋愛関係の多様な形を描いた作品を求める読者
• 人間の成長と関係性の変化を重視する方
• シリーズのクライマックスを心待ちにしているファンの方