付き合ってあげてもいいかな 6巻 レビュー：失恋の痛みと友情の境界線を描く

作品概要

タイトル： 付き合ってあげてもいいかな
作者： たみふる
出版社： 小学館（裏サンデー女子部）
発売日： 2021年1月
巻数： 6巻 ※シリーズ全14巻完結

あらすじ

「フツーの友達に戻りたい。…だめ？」失恋の痛みに耐えきれず、冴子に縋ってしまうみわ。ますます拗れていく関係に、冴子は困惑しながらも流されていってしまいます。
「私たち もうとっくに… 元の友達になんて、戻れないよ…」弱い自分を曝け出せる場所はどこなのか。迷いながらも自分なりの進路を見つけようとする第6巻です。

見どころ

失恋後の複雑な関係性

志帆先輩からの拒絶を受けて深く傷ついたみわが、元恋人である冴子に依存してしまう複雑な心理が丁寧に描かれています。失恋の痛みから逃れたい気持ちと、もう一度安心できる関係を求める気持ちが入り混じった、人間らしいリアルな感情表現が見どころです。この描写により、恋愛関係の終わり方の難しさが浮き彫りになります。

「友達に戻る」ことの不可能性

冴子の「元の友達になんて、戻れないよ…」という台詞は、一度恋人関係になった二人の関係の不可逆性を表しています。過去の親密さを知っているからこそ生まれる距離感や、友達として接することの困難さが見事に表現されており、多くの読者が共感できる普遍的なテーマとなっています。

冴子の困惑と優しさ

みわからの依存的なアプローチに対する冴子の反応が非常にリアルに描かれています。元恋人からの甘えを完全に拒絶することもできず、かといって受け入れることもできない複雑な心境が、表情の細かい変化や行動の迷いによって表現されています。冴子の人間的な優しさと困惑が同時に描かれているのが印象的です。

自分の弱さと向き合う過程

「弱い自分を曝け出せる場所はどこ？」というテーマを通じて、みわが自分自身の脆さと向き合っていく過程が描かれています。失恋の痛みを他人に委ねるのではなく、自分で乗り越えていく必要性に気づいていく成長過程が、読者にとっても示唆に富んだ内容となっています。

作者の特色・技法

たみふるさんの心理描写の巧みさが最も発揮される巻の一つです。特に、言葉にできない複雑な感情を表情や仕草で表現する技術が光ります。コマとコマの間の「間」の取り方も秀逸で、読者が登場人物の心境を追体験できるような構成になっています。また、重いテーマを扱いながらも説教臭くならない絶妙なバランス感覚も見事です。

ジャンルとしての評価

百合・ガールズラブジャンルにおいて、恋愛関係の「その後」を丁寧に描いた作品として価値があります。多くの作品では描かれることの少ない、別れた後の微妙な関係性や友情との境界線を正面から取り上げており、ジャンルに新しい視点を提供しています。恋愛だけでなく人間関係全般に通じる普遍的なテーマを扱っているのも評価できる点です。

総合評価

★★★★☆ 4/5

失恋の痛みと人間関係の複雑さを見事に描いた、感情的に深い内容の巻です。みわと冴子両方の心境が丁寧に描写されており、読者は二人の立場を理解しながら物語を追うことができます。恋愛漫画として成熟した視点を持つ作品として、多くの読者の心に響く内容となっています。

こんな人におすすめ

• 失恋後の心境変化に興味がある方
• 元恋人同士の微妙な関係性を描いた作品を求める読者
• 人間の弱さと成長を丁寧に描いた物語が好きな方
• 複雑な人間関係を扱った恋愛漫画を探している方