付き合ってあげてもいいかな 12巻 レビュー：愛のままならなさと別れの決断を描く感動の転換点

作品概要

タイトル： 付き合ってあげてもいいかな
作者： たみふる
出版社： 小学館（裏サンデー女子部）
発売日： 2024年2月
巻数： 12巻 ※シリーズ全14巻完結

あらすじ

「あなたを好きになってよかった。」愛する人と、身も心も求め合えないつらさに限界を感じてしまったみわ。優梨愛の気持ちを尊重して、半同棲状態を解消した冴子。「私、環ちゃんと友達だった関係に戻りたい。」一番に求めるものを、差し出せるとは限らない。愛のままならなさを受けとめる、第12巻です。

見どころ

みわの限界と苦渋の決断

愛する環と身も心も求め合えないつらさに限界を感じたみわが、ついに重大な決断を下す場面が描かれます。「私、環ちゃんと友達だった関係に戻りたい。」という台詞は、愛しているからこそ別れを選択するという究極の愛の形を表現しており、読者の心に深い感動をもたらします。みわの成長と覚悟が表れた重要なシーンです。

冴子の優梨愛への配慮と犠牲

優梨愛の気持ちを尊重して半同棲状態を解消する冴子の姿は、真の愛情とは何かを考えさせられる描写となっています。自分の欲求よりもパートナーの幸福を優先する冴子の行動は、恋愛における成熟した愛の形を示しており、キャラクターの深い人間性を感じさせます。

「愛のままならなさ」というテーマの深化

「一番に求めるものを、差し出せるとは限らない」という表現で示される愛の複雑さが、この巻の核心となっています。愛し合っているからといって、すべてが思い通りにいくわけではないという現実を正面から描き、恋愛関係の本質的な困難さを浮き彫りにしています。このテーマの扱い方は非常に繊細で説得力があります。

各カップルの異なる選択

みわと環、冴子と優梨愛のそれぞれが、同じような困難に対して異なる選択をする様子が対比的に描かれています。別れを選ぶカップルと関係を再構築するカップルの対比により、恋愛の多様性と、問題に対するアプローチの違いが明確に示されており、読者はそれぞれの選択の意味を深く考えさせられます。

作者の特色・技法

たみふるさんの恋愛描写の集大成とも言える巻です。特に別れのシーンの描写は、感情的になりすぎることなく、しかし深い悲しみと愛情を同時に表現する高度な技術が光ります。また、「あなたを好きになってよかった。」という肯定的な表現で別れを描くことで、単なる悲劇的な終わりではなく、美しい愛の完成形として読者に印象を残します。

ジャンルとしての評価

百合・ガールズラブジャンルにおいて、愛の多様な形と結末を描いた作品として非常に価値があります。ハッピーエンドだけでなく、愛ゆえの別れという選択も美しく描くことで、ジャンルに新しい深みと現実性を与えています。恋愛の理想的な側面だけでなく、現実的な困難さも含めて愛を描く姿勢は、ジャンルの成熟度を示す重要な作品と言えるでしょう。

総合評価

★★★★★ 5/5

シリーズの重要な転換点となる感動的な巻です。愛のままならなさと、それを受け入れる人間の強さを見事に描いており、読者に深い感動と共感をもたらします。恋愛漫画として最高レベルの完成度を持ち、多くの読者の心に長く残る内容となっています。最終巻への期待を高める、シリーズの集大成にふさわしい巻です。

こんな人におすすめ

• 恋愛の現実的な困難さと美しさを描いた作品を求める方
• 愛ゆえの別れという選択に共感できる読者
• 成熟した恋愛観を描いた作品が好きな方
• 深い感動と余韻を求める恋愛漫画好きの方