作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 22
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2005年12月
巻数: 第22巻
あらすじ
キメラアントが流星街に侵入したことで、ついに幻影旅団が動き出します。故郷を守るため、旅団メンバーたちは本格的にキメラアント討伐に参戦。
一方、ゴンは成長した力で複数のキメラアントと戦闘を繰り広げます。東ゴルトーには戒厳令が発令され、情勢は緊迫の度を増していきます。
これまでとは全く異なる「悪対悪」の構図により、物語は新たな局面を迎える激動の一冊です。
見どころ
幻影旅団の本格参戦と故郷愛
この巻最大の見どころは、幻影旅団が故郷である流星街を守るために本格参戦することです。普段は盗賊として活動する彼らが、故郷の危機に際して団結し、住民を守る姿は意外性と感動を同時に与えます。特にフェイタン、フィンクス、シャルナークらの連携プレーは、彼らの結束力の強さを改めて印象づけます。悪役でありながら故郷への深い愛情を持つ複雑なキャラクター性が見事に表現されています。
悪対悪の新しい戦闘構図
幻影旅団対キメラアントという「悪対悪」の構図は、これまでにない新鮮な戦闘として描かれます。どちらも人間を殺害する存在でありながら、読者はより人間らしい感情を持つ旅団側に感情移入してしまう巧妙な演出となっています。この構図により、善悪の境界線について深く考えさせられる哲学的な要素も加わり、単純なバトル漫画を超えた深みのある内容となっています。
ゴンの戦闘力向上と成長の証明
ゴンが複数のキメラアント(フクロウとコウモリ型)と戦う場面では、彼の飛躍的な成長が如実に表現されています。以前は苦戦していた相手を圧倒的な実力差で制圧する姿は、修行の成果と実戦経験の積み重ねを見事に表現しています。特にジャジャン拳の威力向上と、戦術的な判断力の向上は、彼がプロハンターとして確実に成長していることを印象づける重要な場面です。
東ゴルトーの政治的緊張と世界観の拡大
東ゴルトーに戒厳令が発令される展開は、キメラアントの脅威が個人的な戦いを超え、国家レベルの危機となっていることを示しています。政治的な動きと軍事行動が物語に加わることで、世界観のスケールが大幅に拡大し、より現実的な危機感が演出されています。この設定により、ハンターたちの活動が世界全体に与える影響の大きさも理解でき、物語の重要性が増しています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の群像劇構成力が特に発揮された巻です。幻影旅団、ゴン、政府軍など複数の勢力が同時に動く複雑な状況を、読者が混乱することなく理解できるよう巧みに整理されています。また、旅団メンバーの能力描写も詳細で、それぞれの個性と戦闘スタイルの違いが明確に描き分けられています。戦闘シーンでは、スピード感と迫力を両立させたコマ割りが効果的で、特にフェイタンの「許せない太陽(ペインパッカー)」の視覚的表現は圧巻です。
ジャンルとしての評価
従来の勧善懲悪を超えた複雑な価値観を提示する、成熟したバトル漫画として高く評価できます。悪役同士の戦いでありながら、読者が感情移入できるキャラクターの魅力と深い動機付けは、ジャンルの新しい可能性を示しています。また、個人の戦いから国家レベルの危機への展開は、スケールの大きなストーリーテリングとして優れており、少年漫画の枠を超えた大人の読者も満足させる内容となっています。
総合評価
★★★★★ 5/5 幻影旅団の参戦により、物語に新たな魅力と複雑さが加わった傑作巻です。悪対悪という独特な構図、ゴンの成長、政治的な緊張など、あらゆる要素が最高レベルで融合し、読者を飽きさせない展開となっています。特に旅団メンバーの故郷愛という意外な一面は、キャラクターの奥深さを感じさせ、HUNTER×HUNTERの人物描写の巧みさを改めて印象づける名作です。
こんな人におすすめ
- 悪役キャラクターの意外な一面や深い動機に興味がある方
- 複数勢力が入り乱れる複雑な戦闘構図を楽しみたい方
- 主人公の成長と実力向上を重視する方
- 政治的・社会的な背景を含む世界観の拡大を求める方