作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 23
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2006年5月
巻数: 第23巻
あらすじ
キルアはイカルゴ、オロソ兄妹との連戦に挑み、巧妙な戦術で勝利を収めます。一方、ゴンは透明化能力を持つメレオロンと遭遇し、共闘することになります。
そして物語の最重要人物コムギが登場。盲目の軍儀少女である彼女と王メルエムとの軍儀対戦が始まります。
この出会いが王の運命を大きく変えることになります。
モラウ対ヂートゥの本格的な戦いも描かれ、各勢力の思惑が複雑に絡み合う重要な転換点となる一冊です。
見どころ
コムギの登場と王への影響
この巻最大の意義は、盲目の軍儀少女コムギの登場です。ゲームでしか人間に勝てないと思っていた王メルエムが、初めて敗北を経験することになります。コムギの純粋な軍儀への情熱と、王の知性への挑戦は、単なるゲーム対戦を超えた深い精神的交流として描かれます。この出会いにより、絶対的な支配者だった王の内面に変化が生まれ始め、物語全体の方向性を決定づける重要な展開となっています。
キルアの連戦と戦術的成長
キルアがイカルゴ、オロソ兄妹と立て続けに戦う展開は、彼の戦術的思考力の向上を如実に示しています。特に「ダツDEダーツ」というゲームを通じたオロソ兄妹との戦いでは、相手のルールを逆手に取った巧妙な戦略が光ります。電撃能力の応用技術も格段に向上しており、実戦経験を通じた成長が見事に表現されています。また、イカルゴとの友情的な関係の発展も、キルアの人間的な魅力を際立たせています。
メレオロンとの同盟とゴンの戦略眼
透明化能力を持つメレオロンとゴンの同盟は、今後の作戦における重要な要素となります。メレオロンの「神の共犯者(ゴッドアコンプライス)」とゴンの戦闘力の組み合わせは、戦術的に大きな可能性を秘めており、読者の期待を高める展開です。ゴンがメレオロンの過去と動機を理解し、共感を示す場面は、彼の成長した判断力と人間性の深さを表現した印象的なシーンとなっています。
モラウ対ヂートゥの海戦バトル
モラウとヂートゥの戦いは、海という特殊な環境での念能力バトルとして独創性に富んでいます。モラウの「紫煙拳(ディープパープル)」とヂートゥの強化系能力による攻防は、環境要因を活かした戦術的な駆け引きが印象的です。特にモラウの経験値と冷静な判断力、そして煙を使った多彩な戦術は、ベテランハンターとしての技量の高さを見事に表現しています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の対比表現の技術が特に光る巻です。王とコムギという対照的な存在の出会い、キルアの連戦による成長、海での激戦など、様々な要素が巧みに組み合わされています。特にコムギの純粋さと王の傲慢さの対比は、キャラクターの本質を浮き彫りにする効果的な演出となっています。軍儀の描写も詳細で、実際のゲームとしての説得力を持ちながら、キャラクターの心理戦の舞台としても機能する優れた設定となっています。
ジャンルとしての評価
バトル漫画に知的ゲームの要素を組み合わせた革新的な作品として評価できます。単純な力の勝負だけでなく、頭脳戦、心理戦、そして人間関係の構築という多層的な要素を含んでおり、読者により深い満足感を提供しています。特にコムギという非戦闘員キャラクターが物語の核心を担うという構成は、従来のバトル漫画の枠組みを大きく超えた意欲的な試みとして、ジャンルの可能性を広げています。
総合評価
★★★★★ 5/5 コムギの登場により、HUNTER×HUNTERの物語が新たな次元に到達した記念すべき巻です。王の内面変化の始まり、キルアの成長、戦術的な戦闘の数々など、あらゆる要素が最高レベルで表現されており、読者を強く引き込む構成となっています。特にコムギと王の軍儀対戦は、後の感動的な展開への重要な布石として、シリーズ全体において欠かせない名場面となっています。
こんな人におすすめ
- 知的ゲームや頭脳戦を含む複雑なバトルを楽しみたい方
- キャラクターの内面変化と成長を重視する方
- 非戦闘員キャラクターが物語に与える影響に興味がある方
- 戦術的思考と友情を描いた物語を求める方