HUNTER×HUNTER 32巻レビュー:選挙決着とゴンの奇跡的復活、新たなる旅立ち

HUNTER×HUNTER32 少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 32
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2014年6月
巻数: 第32巻

あらすじ

ハンター協会会長選挙の候補者が4名に絞られ、パリストンミザイストムチードルレオリオによる最終決戦が展開されます。陰謀と野望が渦巻く中、意外な展開で選挙は決着を迎えます。
一方、キルアアルカを連れて重体のゴンのもとへ向かい、ナニカの力でゴンの治癒を試みます。
そしてゴンの運命は。

見どころ

レオリオの予想外の善戦と人望

レオリオが会長候補として急浮上する展開は、この巻最大のサプライズです。ジンに対する怒りから放った一撃が、多くのハンターたちの共感を呼び、一躍時の人となります。政治的な駆け引きとは無縁だった彼が、純粋な正義感と仲間への想いだけで支持を集める姿は、民主主義の理想を体現した美しいエピソードです。特に彼の演説シーンは、友情と信念の力を表現した感動的な場面となっています。

ナニカによるゴンの奇跡的治癒

アルカの中のナニカがゴンを治癒する場面は、この巻のクライマックスです。あれほど絶望的だったゴンの状態が、愛する兄の願いによって完全に回復する様子は、まさに奇跡の瞬間として描かれています。特にナニカがキルアに「ありがと」と言う場面は、単なる能力ではなく、愛情に基づいた行為であることを印象づける感動的なシーンです。治癒後のゴンの健やかな笑顔は、多くの読者に安堵と喜びをもたらします。

ゴンとジンの世界樹での感動的再会

長い間離ればなれだったゴンと父親ジンの再会は、物語全体の大きな目標の一つが達成される歴史的な瞬間です。世界樹の頂上という特別な場所での対話は、父子の絆を深める重要な時間として描かれています。ジンがゴンに語る冒険への想いと、ゴンが示す理解と成長は、二人の関係が新しい段階に入ったことを示しています。特にゴンが「会えて良かった」と素直に語る場面は、長い旅路の意味を感じさせる名場面です。

新会長決定と組織の刷新

選挙の結果、意外な人物が新会長に就任し、ハンター協会は新しい時代を迎えます。この決着は、単なる権力争いではなく、組織の理念と方向性を決める重要な選択として描かれています。新体制の下でハンター協会がどのような道を歩むのか、その方向性が示唆される展開は、今後の物語への期待を高める効果的な演出となっています。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の物語完結技術が特に光る巻です。複数の物語線を同時に進行させながら、それぞれに満足のいく結末を与える構成力は見事です。特にゴンの復活シーンでは、視覚的効果と感情表現が完璧に調和し、読者に深い感動を与えています。また、ジンとの再会シーンでは、セリフの間や表情の変化を巧みに使って、父子の複雑な感情を表現する技術の高さを見せています。

ジャンルとしての評価

少年漫画における「目標達成」と「新たな出発」というテーマを理想的に描いた作品です。主人公の長年の夢が叶う瞬間の描写は、読者に大きな達成感と感動を与えており、少年漫画の王道要素を現代的にアップデートした優れた例として評価できます。また、政治的なプロセスと個人的な成長を組み合わせることで、社会性と人間ドラマの両方を兼ね備えた成熟した内容となっています。

総合評価

★★★★★ 5/5

選挙編とアルカ編の完結編として、HUNTER×HUNTERの新章を美しく締めくくった傑作です。ゴンの復活、父子の再会、そして新体制の始まりという重要な展開が全て最高レベルで表現されており、読者に深い満足感を与える構成となっています。特にゴンとジンの再会は、シリーズ全体の大きな節目として、多くの読者にとって忘れられない感動的な場面となっています。

こんな人におすすめ

  • 長年の目標達成と感動的な再会を楽しみたい方
  • 政治的駆け引きの決着に興味がある方
  • キャラクターの成長と新たな出発を重視する方
  • 家族愛と友情をテーマにした物語を求める方
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