HUNTER×HUNTER 21巻レビュー:王の覚醒と女王の死、運命の歯車が動き出す

少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 21
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2005年6月
巻数: 第21巻

あらすじ

キメラアント討伐隊の本格的な活動が始まる中、キルアシュートとの戦いで自分の限界と向き合います。ついにキメラアントの王メルエムが覚醒し、女王アントは死を迎えます。王は東ゴルトーへ向かい、ゴンパームとのデートを経験。そして運命的な再会が待ち受けています。ナックルモラウによるヂートゥとの戦い、そしてゴンが壊れた状態のカイトと再会する衝撃の展開が描かれる重要な転換点となる一冊です。

見どころ

王メルエムの覚醒と圧倒的存在感

この巻最大の衝撃は、キメラアントの王メルエムの覚醒です。生まれた瞬間から母親である女王を顧みず、圧倒的な力と冷酷さを見せつける彼の存在は、物語全体の緊張感を一気に高めます。特に彼が放つオーラの描写は、これまでの敵とは次元の違う脅威であることを視覚的に表現しており、読者に深い恐怖感を与えます。王という存在の孤高さと非情さが見事に描かれた名場面です。

キルアの成長とシュートとの心理戦

キルアシュートの戦いは、単純な力勝負を超えた心理的な成長物語として描かれます。これまで逃げ癖があったキルアが、仲間を守るために自分の弱さと向き合う姿は、彼の精神的な成長を象徴する重要な場面です。シュートの能力「暗い宿(ホテルラフレシア)」との攻防を通じて、キルアの戦術的な思考力と友情への想いの深さが丁寧に描かれています。

女王アントの死と母性の描写

女王アントの死は、キメラアント編の中でも特に感動的な場面として描かれます。息子である王に見捨てられながらも、最期まで彼への愛情を抱き続ける母親の姿は、敵キャラクターでありながら読者の心を強く打ちます。特に「小さく生まれた我が子よ」という言葉は、母性の普遍的な愛を表現した名台詞として印象深く描かれています。

ゴンとカイトの衝撃的な再会

巻末で描かれるゴンとカイトの再会は、読者に大きな衝撃を与える展開です。ネフェルピトーによって操られている状態のカイトを目の当たりにしたゴンの絶望と怒りは、今後の物語展開を大きく左右する重要な転換点となります。これまで純粋で前向きだったゴンの表情が一変する瞬間は、キャラクターの成長と物語の深刻さを同時に表現した印象的な演出です。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の心理描写と感情表現の技術が特に光る巻です。メルエムの冷酷さ、女王の母性、キルアの成長、ゴンの絶望など、それぞれ異なる感情を持つキャラクターの内面が見事に描き分けられています。特に表情の描写が秀逸で、セリフに頼らず表情だけで感情を伝える技術の高さが印象的です。また、戦闘シーンでも心理戦の要素を巧みに織り込み、単純な力の応酬を超えた深みのあるバトルとして構成されています。

ジャンルとしての評価

少年漫画の枠を大きく超えた、重厚な人間ドラマとしての完成度を持つ作品です。敵キャラクターにも深い感情と背景を与え、善悪の境界を曖昧にすることで、読者により深い思索を促しています。特に母性をテーマにした女王アントの描写は、バトル漫画というジャンルを超えた文学的な価値を持ち、あらゆる年齢層の読者に訴えかける普遍的な魅力を持っています。

総合評価

★★★★★ 5/5
キメラアント編の中核部分として、あらゆる要素が最高レベルで表現された傑作巻です。王の覚醒、女王の死、キルアの成長、ゴンの絶望という重要な展開が完璧にバランスされ、読者に強烈な印象を残す構成となっています。特に感情の振れ幅の大きさと、それぞれのキャラクターに対する深い共感を呼ぶ演出は、HUNTER×HUNTERの真価を余すことなく発揮した名作です。

こんな人におすすめ

  • キャラクターの深い心理描写と感情表現を重視する方
  • 敵キャラクターの人間性や背景に興味がある方
  • 母性や家族愛をテーマにした感動的な物語を求める方
  • 主人公の精神的成長と変化を楽しみたい方
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