HUNTER×HUNTER 20巻レビュー:キメラアントとの本格戦闘開始

少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 20
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2004年12月
巻数: 第20巻

あらすじ

ゴンキルアカイトの三人は、キメラアントの実態調査を開始します。
しかし、彼らの前に現れたのは、すでに人間を捕食して高い知能と戦闘能力を獲得したラモットでした。カイトの「狂気のピエロ(クレイジースロット)」が発動し、壮絶な戦いが繰り広げられます。
一方、女王アントは人間の捕食を続け、より強力な兵隊アントたちを生み出していました。
状況の深刻さを理解したカイトは、この脅威に立ち向かうための本格的な作戦を練り始めます。

見どころ

カイトの念能力「クレイジースロット」の初披露

この巻最大の見どころは、カイトの念能力「狂気のピエロ(クレイジースロット)」の初披露です。ランダムに武器を召喚するこの能力は、カイト自身も結果を予測できない不確定要素を持ちながらも、どの武器も高い威力を誇ります。特にラモット戦で発動された大鎌による攻撃は圧巻で、ジンの弟子としての実力の高さを如実に示す名場面となっています。運に左右される能力でありながら、それを戦術に組み込む技術は見事です。

ラモットとの初の本格的キメラアント戦

ラモットとの戦いは、キメラアント編初の本格的な戦闘として重要な意味を持ちます。人間の狡猾さと昆虫の本能を併せ持つラモットの戦闘スタイルは、これまでの敵とは全く異なる恐ろしさを表現しています。特に戦闘中に学習し、戦術を変更する適応力の高さは、単純な力押しでは通用しない新たなタイプの脅威であることを印象づけています。

女王アントと兵隊アントの階級社会

キメラアントの社会構造が詳細に描かれ、女王を頂点とする厳格な階級社会が形成されていることが明らかになります。兵隊アント、師団長、そして女王という階層構造は、彼らが単なる野生動物ではなく、組織化された軍事集団として機能していることを示しています。この設定により、個体の強さだけでなく、集団としての脅威性も表現されており、物語の緊張感を大幅に高めています。

ゴンとキルアの実戦経験と成長

カイトと共に行動することで、ゴンとキルアはより実戦的な戦闘技術と判断力を学んでいます。特に相手の実力を瞬時に見極め、適切な戦術を選択する能力は、グリードアイランドでの修行とは異なる実戦での成長として描かれています。プロハンターとして活動する厳しさと責任の重さを理解し始める二人の姿は、彼らの精神的成長を感じさせる重要な要素となっています。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の生物描写と戦闘演出の技術が特に光る巻です。キメラアントの異形な外見と人間的な知性の融合は、不気味さと脅威性を見事に表現しています。また、カイトのクレイジースロットの視覚的表現も独創的で、ルーレット的な要素と実際の武器召喚の迫力が効果的に組み合わされています。戦闘シーンでは、スピード感と緊張感を両立させたコマ割りが印象的で、読者を戦いの渦中に引き込む演出となっています。

ジャンルとしての評価

生物学的恐怖とバトル要素を高次元で融合させた、ダークファンタジーの傑作です。従来の少年漫画では扱われることの少ない種族間の生存競争という重いテーマを、エンターテイメント性を損なうことなく描いています。特に敵の学習能力と適応力という設定は、戦略性を重視する読者にとって知的な楽しさを提供しており、バトル漫画の新たな可能性を示す意欲作として評価できます。

総合評価

★★★★☆ 4/5 キメラアント編の本格的な戦闘開始により、HUNTER×HUNTERの新たな魅力が開花した重要な巻です。カイトの念能力披露、新たなタイプの敵との戦い、そして主人公たちの成長が巧みに組み合わされ、読者の期待を大いに満たす構成となっています。これまでとは全く異なる恐怖と緊張感を提供する展開は、シリーズの幅広さと深さを印象づける優秀な一冊です。

こんな人におすすめ

  • 新しいタイプの念能力と戦闘スタイルを楽しみたい方
  • 生物学的な恐怖と戦略性を求める方
  • 主人公の実戦での成長過程を重視する方
  • 複雑な敵の社会構造と階級制度に興味がある方
タイトルとURLをコピーしました