BEASTARS 1巻 レビュー：動物版青春群像劇の衝撃デビュー作！新感覚学園ドラマの真髄

作品概要

タイトル： BEASTARS 1巻
作者： 板垣巴留
出版社： 秋田書店（少年チャンピオン・コミックス）
発売日： 2017年1月
巻数： 第1巻

あらすじ

肉食獣と草食獣が共存する世界を舞台に、全寮制学園「チェリートン学園」で演劇部に所属する心優しいハイイロオオカミのレゴシが主人公です。
ある日、同じ演劇部のアルパカテムが何者かに「食殺」されるという衝撃的な事件が発生。
肉食獣への疑いの目が向けられる中、レゴシは真相を追い求めながら、動物たちの複雑な社会で青春を謳歌していく群像劇が幕を開けます。

見どころ

独創的な世界観設定

肉食獣と草食獣が共存する世界という設定が見事に構築されています。現実の動物の習性や本能を巧みに人間社会に置き換え、差別や共存といった現代社会のテーマを自然に描写しています。チェリートン学園での寮生活の描写も丁寧で、読者を作品世界に引き込む力があります。

主人公レゴシの魅力的なキャラクター設定

狼なのにとっても繊細というレゴシのキャラクターが印象的です。肉食獣でありながら心優しく、内向的で思慮深い性格は従来の作品にはない新鮮さを感じさせます。自分の本能と理性の間で葛藤する姿は、思春期の少年の心境を巧みに表現しています。

食殺事件という重厚なミステリー要素

単なる学園ものではなく、「食殺」というタブーを扱ったシリアスなミステリー要素が物語に深みを与えています。草食獣と肉食獣の関係性に緊張感をもたらし、読者の興味を強く引きつける構成になっています。

本能と理性の心理描写

動物の本能と人間的な理性の葛藤を繊細に描いた心理描写が秀逸です。特にレゴシの内面の複雑さや、周囲の動物たちが抱える不安や恐怖の感情が丁寧に表現されており、読者の共感を呼びます。

作者の特色・技法

画力：動物の特徴を活かしながらも人間的な感情表現を両立させた独特の絵柄が印象的です。特に目の描き方や表情の作り方に作者の技術力の高さが表れています。

演出：コマ割りや構成に工夫が見られ、緊張感のあるシーンでは効果的な見せ方をしています。食殺事件の描写では、直接的な表現を避けながらも恐怖感を演出する技法が見事です。

ジャンルとしての評価

学園ものとミステリーを融合させた作品として、非常に完成度の高いスタートを切っています。従来の擬人化動物作品とは一線を画す重厚なテーマ性と、青春群像劇としての魅力を両立させている点で、ジャンルに新たな可能性を示した記念すべき第1巻です。

総合評価

★★★★☆ 4/5
新感覚の動物版青春群像劇として、衝撃的なデビューを飾った作品です。独創的な世界観設定と魅力的なキャラクター、そして重厚なミステリー要素が絶妙に組み合わされ、読者を強く引きつけます。1巻の時点では物語の導入部分ですが、今後の展開への期待を十分に感じさせる完成度の高い内容です。

こんな人におすすめ

• 新感覚の学園ものを探している読者
• 動物キャラクターが活躍する作品が好きな方
• 心理描写が丁寧な青春ドラマを求める読者
• ミステリー要素を含む群像劇を楽しみたい方