HUNTER×HUNTER 36巻レビュー:念講習暗殺事件と旅団参戦の衝撃

HUNTER×HUNTER36 少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 36
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2018年10月
巻数: 第36巻

あらすじ

クラピカ主催の念講習中に参加者の一人が殺害されるという衝撃的な事件が発生します。

講習を続行しながら暗殺者を探すクラピカの緊迫した捜査が始まります。一方、第2王子カミーラ第1王子ベンジャミンの殺害に向かい、第13王子マラヤームの部屋では異変が起きています。不可解な事件が続く中、ついに幻影旅団が船内で動き出し、王位継承戦に新たな混乱をもたらす。

見どころ

念講習中の暗殺という密室劇

クラピカが開催する念講習の最中に参加者が殺害されるという展開は、古典的な密室殺人を念能力バトルに応用した秀逸なミステリーです。限られた空間の中で、誰が犯人なのかを特定しながら講習を続行するクラピカの冷静さと機転は圧巻です。特に参加者一人一人を観察しながら犯人を絞り込んでいく過程は、読者も一緒に推理を楽しめる知的な展開となっています。

カミーラ対ベンジャミンの王子間直接対決

第2王子カミーラ第1王子ベンジャミンの殺害を試みる展開は、王位継承戦における直接的な武力行使として注目されます。カミーラの念能力「百万回生きた猫(ネコノナマエ)」と、ベンジャミンの圧倒的な戦闘力の対決は、それぞれの王子の特性を活かした興味深いバトルです。特にカミーラの復讐型能力の恐ろしさと、それに対するベンジャミンの対処法は、念能力の多様性を示す好例となっています。

マラヤーム王子の部屋での異変

第13王子マラヤームの部屋で起こる不可解な現象は、王位継承戦の超常的な側面を象徴しています。幼い王子が持つ念獣の特殊性と、それが引き起こす予測不可能な事態は、この継承戦が単なる政治的争いではないことを印象づけます。特に子供の無邪気さと、その背後にある恐ろしい力との対比は、物語に深い不安感を与える効果的な演出となっています。

幻影旅団の船内参戦という新展開

幻影旅団のメンバーが船内で本格的に活動を開始することで、王位継承戦の構図が一気に複雑化します。ヒソカを追って船に潜り込んだ旅団の存在は、既に混沌とした状況にさらなる不安定要素を加えることになります。特に旅団の目的がヒソカの抹殺にある一方で、王位継承戦にどのように関わってくるのかという展開への期待は、読者の興味を大いに引く要素となっています。

作者の特色・技法

冨樫義博先生のミステリー要素と政治サスペンスの融合技術が特に発揮された巻です。念講習での暗殺事件では、限られた情報から犯人を特定していくロジカルな推理過程を丁寧に描いており、読者も一緒に謎解きを楽しめる構成になっています。また、複数の王子たちの動きを同時並行で描きながら、それぞれの個性と能力を際立たせる演出技術も見事です。特に緊張感の維持と情報の整理のバランスが秀逸です。

ジャンルとしての評価

バトル漫画にミステリー要素を組み込んだ革新的な試みとして高く評価できます。念能力という超常的な力がありながら、論理的な推理によって事件を解決していく手法は、従来のバトル漫画にはない新しい魅力を提供しています。また、政治的駆け引き、超能力バトル、ミステリーという異なるジャンルの要素を一つの作品内で違和感なく融合させる技術は、漫画表現の新たな可能性を示しています。

総合評価

★★★★☆ 4/5

王位継承戦の複雑さがさらに深まり、多様な要素が絶妙にバランスされた優秀な巻です。ミステリー、バトル、政治劇という異なる要素が有機的に結合し、読者に多層的な楽しさを提供しています。特にクラピカの推理力と冷静さ、そして幻影旅団参戦という新展開は、物語の今後の方向性に対する期待を大いに高める内容となっており、暗黒大陸編の中でも特に印象深い一冊です。

こんな人におすすめ

  • ミステリー要素を含むバトル漫画を楽しみたい方
  • 論理的な推理と超能力の組み合わせに興味がある方
  • 複雑な政治的駆け引きを重視する方
  • 幻影旅団の新たな活動に期待する方
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