東京心中・9- 【あらすじ・レビュー・試し読み】仕事を辞めた宮坂の回復と新たな出発、心温まる家族の物語

作品概要

タイトル： 東京家族-東京心中・9-
作者： トウテムポール
出版社： 茜新社（EDGE COMIX）
発売日： 2019年5月
巻数： 9巻（全10巻完結済み）

あらすじ

番組制作会社の仕事も恋人の矢野さんとの関係も安定してきた宮坂絢は、大手テレビ局への出向スタッフになります。
しかし、あまりに過酷すぎる現場に耐えかね、宮坂はまさかの逃亡！？
人気のワーキングBL「東京心中」シリーズ第9弾では、仕事を辞めた宮坂が選んだものとは何だったのか。心身ともに疲労困憊した宮坂の回復過程と、新たな出発への道のりが温かく描かれます。

見どころ

心の回復過程の丁寧な描写

前作で心身ともに追い詰められた宮坂が、ゆっくりと回復していく様子が美しく描かれています。矢野さんとの優しい時間、詩夫妻との暖かいコミュニケーション、そして何より宮坂らしい笑顔を取り戻していく過程が、読者の心を癒してくれます。

「東京家族」というタイトルの深い意味

血のつながりを超えた、本当の「家族」とは何かを問いかけるタイトルです。宮坂を支える矢野さんや仲間たち、そして新たに築かれていく絆が、従来の家族概念を超えた現代的な家族像を提示しています。地方出身者が東京で見つけた新しい家族の形が描かれます。

仕事との向き合い方の変化

過酷な現場から逃げ出した宮坂が、改めて「働くこと」について考え直す過程が描かれています。詩さんの仕事に対する姿勢や、映像の世界との新しい関わり方など、宮坂なりの答えを見つけていく姿が感動的です。

宮坂の新たなスタート

収録作品「ゆめかうつつ」「東京家族」「新しい仕事？」「棲家」「春風秋雨録」「新しい未来」「家ねこになりました」「番外編 あの時の約束」と、多彩なエピソードを通して宮坂の新しい人生への第一歩が描かれています。

周囲の人々の温かさ

宮坂を支える人々の優しさが際立つ巻です。矢野さんの愛情深いサポート、詩夫妻の家族のような温かさ、そして職場の仲間たちの絆。人間関係の豊かさが、読後感を非常に良いものにしています。

作者の特色・技法

この巻では、トウテムポールさんの人間関係描写の巧みさが特に光ります。傷ついた人の心の回復過程を、説教臭くならずに自然に描く技術は見事です。また、働くことや生きることへの哲学的な問いかけを、日常会話や何気ない場面に織り込む手法も秀逸で、読者は自然にこれらのテーマについて考えさせられます。

ジャンルとしての評価

ワーキングBLとして、仕事で挫折した後の立ち直りという現代的なテーマを扱った意義深い作品です。単なる職場恋愛を超えて、現代社会で生きることの意味、人とのつながりの大切さ、そして真の幸せとは何かを問いかけています。ジャンルの枠を超えた普遍的な価値を持つ作品として高く評価できます。

総合評価

★★★★★ 5/5
前作の重いテーマを受けて、希望と癒しに満ちた素晴らしい巻です。宮坂の回復過程は読者の心も温かくし、人とのつながりの大切さを改めて実感させてくれます。「東京家族」というタイトル通り、血縁を超えた現代的な家族の在り方を美しく描いた名作です。シリーズを通して読んできた読者なら、必ず感動する一冊です。

こんな人におすすめ

• シリーズの継続読者で宮坂の回復を見守りたい人
• 心の癒しを求める人
• 現代的な家族観や人間関係に興味がある人
• 仕事や人生について考え直したい人