東京心中（下） レビュー：二人の関係と問題だらけの恋愛の行方は

作品概要

タイトル： 東京心中（下）
作者： トウテムポール
出版社： 茜新社（EDGE COMIX）
発売日： 2013年3月
巻数： 2巻（全10巻完結済み）

あらすじ

テレビ業界で働く新米AD・宮坂絢は、先輩ディレクター・矢野聖司への気持ちを抑えきれなくなり、ついに告白します。彼女とも別れてしまった宮坂ですが、当の矢野はマイペースでお構いなしの様子で…。男同士、しかも上司と部下という問題だらけの恋愛で、ついに一線を越えてしまったら一体どうなるのでしょうか。

見どころ

進展する関係性とその複雑さ

上巻で告白した宮坂と矢野の関係が、ついに新たな段階に進みます。しかし、矢野の本心は相変わらず読めず、宮坂の一途な想いとのギャップが際立ちます。「男同士で！？上司と部下で！？」という状況設定が生み出す緊張感と、それを取り巻く現実的な問題が丁寧に描かれています。

より深いキャラクター描写

下巻では、両キャラクターの内面がより深く掘り下げられます。宮坂の純粋さと矢野の複雑さがより鮮明になり、読者は二人の関係に一層感情移入できるようになります。特に矢野の微妙な心境の変化は、表情や仕草の細かい描写から読み取れる部分も多く、何度読み返しても新たな発見があります。

リアルな職場環境での恋愛の困難さ

職場恋愛、しかも同性愛という二重の困難さが現実的に描かれています。周囲の目や職場での立場、将来への不安など、単純に「好き同士だから大丈夫」では済まない大人の恋愛の複雑さが見事に表現されています。

感情の機微を捉えた演出

トウテムポールさんの演出技法が光る巻です。特に二人の距離感の変化を表現するコマ割りや、言葉にならない感情を伝える表情の描写が秀逸です。読者が二人の心の動きを自然に感じ取れるような、巧みな表現力が随所に見られます。

作者の特色・技法

下巻では特に、微細な表情の変化や仕草の描写に作者の技量が発揮されています。また、シリアスなシーンとコミカルなシーンの切り替えが自然で、重くなりすぎない絶妙なバランス感覚が光ります。背景の描き込みも丁寧で、テレビ業界の現場感がリアルに伝わってきます。

ジャンルとしての評価

ワーキングBLとして、職場での恋愛の現実的な困難さを正面から描いた優秀な作品です。単なる甘い恋愛ものではなく、社会人として、そして一人の人間としての成長も描かれており、ジャンル作品としての深みがあります。上巻から継続して読むことで、より一層作品の魅力を感じられます。

総合評価

★★★★☆ 4/5
上巻で築かれた関係性がさらに発展し、より複雑で現実的な恋愛模様が描かれた完成度の高い続編です。一線を越えた二人の関係の行方が気になり、次巻への期待が高まります。大人の恋愛の複雑さと美しさを同時に感じられる、読み応えのある作品です。

こんな人におすすめ

• 上巻を読んで続きが気になる人
• 複雑な恋愛模様を楽しみたい人
• 大人の恋愛を描いた作品を求める人
• キャラクターの成長過程を見守りたい人