東京心中（上） レビュー：テレビ業界の厳しい現実と不器用な恋を描く話題のワーキングBL

作品概要

タイトル： 東京心中（上）
作者： トウテムポール
出版社： 茜新社（EDGE COMIX）
発売日： 2013年1月
巻数： 1巻（全10巻完結済み）

あらすじ

テレビ業界に入りたての新米AD・宮坂絢は、厳しい先輩ディレクター・矢野聖司の下で働くことになります。

現場では悪態と暴言が当たり前、こき使われた挙げ句に辞めることを考えますが、ある日映画について語る矢野の笑顔に魅せられて…。テレビ業界を舞台に、年下攻めと美人オッサン受けの不器用すぎる恋愛が始まります。

見どころ

リアルすぎるテレビ業界描写

作者のトウテムポールさんが描くテレビ制作現場のリアルさには驚かされます。ADの過酷な労働環境、理不尽な上下関係、現場での怒号が飛び交う様子など、業界の厳しい現実を容赦なく描写しています。読んでいて胃が痛くなるほどのリアリティがあり、働く人なら誰しも共感できる部分があるでしょう。

魅力的なキャラクター設定

主人公の宮坂絢は22歳の新米ADで、真面目だけど要領が悪く、まさに「ワンコ系攻め」の典型です。一方、29歳の先輩ディレクター矢野聖司は美人で仕事はできるものの、何を考えているか分からない不思議な魅力を持つ「美人オッサン受け」。この対照的な二人の関係性が絶妙に描かれています。

３歩進んで２歩下がる恋愛展開

タイトル通り、二人の関係は進展したかと思えば後退するの繰り返しです。宮坂の一方通行的な想いと、矢野の謎めいた反応のギャップが読者をやきもきさせます。
特に矢野の「知ってる」という淡白な反応には、多くの読者が悶絶したはずです。

丁寧な心理描写

仕事への迷いや人間関係の悩み、初めて同性に恋をする戸惑いなど、キャラクターたちの内面が丁寧に描かれています。特に宮坂が自分の気持ちに気づいていく過程は、とても自然で説得力があります。

作者の特色・技法

トウテムポールさんの画力は非常に高く、特に表情の描き分けが秀逸です。コマ割りも効果的で、テンポよく物語が進む構成になっています。また、業界あるあるを織り交ぜたリアルな描写と、コミカルな表現のバランスが絶妙で、重いテーマながらも読みやすい作品に仕上げています。

ジャンルとしての評価

ワーキングBLというジャンルの中でも、特にリアリティと完成度の高い作品です。単なる職場恋愛を超えて、現代社会の労働問題やキャリア形成についても考えさせられる内容になっています。BL初心者でも読みやすく、ジャンルの入門書としても優秀です。

総合評価

★★★★☆ 4/5
テレビ業界のリアルな描写と魅力的なキャラクターが織りなす、完成度の高いワーキングBLです。恋愛展開にやきもきしつつも、続きが気になって仕方なくなる中毒性があります。働く大人なら誰しも共感できる要素が詰まった、読み応えのある作品です。

こんな人におすすめ

• ワーキングBLが好きな人
• リアルな職場描写を求める人
• 年下攻め×年上受けが好きな人
• テレビ業界に興味がある人