BEASTARS 22巻 レビュー：感動の完結！動物版青春ヒューマンドラマついに終幕

作品概要

タイトル： BEASTARS 22巻（最終巻）
作者： 板垣巴留
出版社： 秋田書店（少年チャンピオン・コミックス）
発売日： 2021年1月
巻数： 第22巻（最終巻・全22巻）

あらすじ

ルイの必死の訴えを見て、裏市に草食獣たちが殺到しました。肉草入り乱れた暴動になりかけるも、「ビースター」ヤフヤの身を挺した行動で落ち着きを取り戻した群衆。しかし、その群衆に紛れていたある特徴的な角を持つガゼルに目が留まります。メロンの父親と名乗り出るそのガゼルとの出会いにより、すべての謎と因縁がついに解き明かされ、動物版青春ヒューマンドラマがついに完結を迎えます。

見どころ

メロンの父親の登場と真実

メロンの父親であるガゼルがついに登場し、これまで謎に包まれていた事実が明らかになります。若気の至りで子供を作るも、異種族間の交流に恐怖して逃げ出してしまった父親の姿は、現実社会の無責任な大人たちを彷彿とさせ、深い社会問題を提起しています。

ゴーシャの怒りと過去への向き合い

メロンの父親の無責任さに対するゴーシャの激しい怒りが描かれ、自分自身の過去と重ね合わせた彼の心境が痛切に表現されています。過去の経験から来る怒りと悲しみが、読者の心に強く響く場面となっています。

社会の変化と希望への道筋

裏市での大騒動を通じて、肉食獣と草食獣が一致団結する姿が描かれ、社会が少しずつ変わっていく可能性が示されています。劇的な変化ではなく、漸進的な社会変革の描写は非常にリアルで説得力があります。

レゴシとハルの関係の決着

レゴシとハルの関係がどのような形で決着するのか、最終的な結末が描かれています。結婚ではなく「付き合う」という形での終了は、作品らしい現実的で希望に満ちた結末として読者に印象を残します。

作者の特色・技法

画力：最終巻にふさわしい重要な感情表現と、社会全体の変化を象徴する群衆シーンの描写が非常に優れています。特に最後のページの無言のシーンは、読者の心に深く刻まれる美しい表現となっています。

演出：2016年から続いた長期連載の完結にふさわしい、これまでのすべての要素を包含した総合的な演出が光っています。社会問題への提起と希望的な未来への展望を同時に描く技術は見事です。

ジャンルとしての評価

動物版青春ヒューマンドラマとしても、社会派ファンタジーとしても、非常に高い完成度で物語を完結させることに成功しています。差別、偏見、愛、共存といった現代社会の重要なテーマを扱いながら、エンターテイメントとしても優れた作品として完結しています。

総合評価

★★★★★ 5/5
2016年から続いた「BEASTARS」が、ついに感動的な完結を迎えました。メロンの父親という最後の重要キャラクターの登場により、物語のすべての謎が解き明かされ、同時に現代社会への鋭い問題提起も行われています。完璧なハッピーエンドではなく、現実的で希望に満ちた結末は作品にふさわしい着地点です。最終ページの美しい描写は、長く読者の心に残ることでしょう。数々の賞を受賞し、アニメ化もされた名作にふさわしい、見事な完結巻です。

こんな人におすすめ

• シリーズを最後まで見届けたい読者
• 現代社会の問題について考えたい方
• 希望に満ちた結末を求める読者
• 動物版青春ヒューマンドラマの完結を体験したい方

完結記念コメント

2016年から2021年まで、全22巻にわたって連載された「BEASTARS」は、単なる動物の擬人化作品を超えた、現代社会への深い洞察と愛に満ちた名作でした。レゴシとハルの恋愛、ルイとの友情、そして種族を超えた共存という普遍的なテーマを通じて、多くの読者に感動と気づきを与えてくれました。板垣巴留先生、素晴らしい作品に出会えて感謝です。