ブルーピリオド 14巻 レビュー：ノーマークス編完結！八虎の選択と美術への新たな向き合い方

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第14巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2023年7月
巻数： 第14巻

あらすじ

不二桐緒とノーマークスでの体験を通じて新たな視点を得た矢口八虎ですが、ノーマークスの資金繰りが困難になり、現在の拠点を解体することになります。八虎は美大を辞めてノーマークスに参加するか、それとも大学での学びを続けるかという重要な選択を迫られます。最終的に八虎が出した答えと、美術への新たな向き合い方が描かれる重要な巻です。

見どころ

ノーマークスの現実と八虎の選択

前巻で魅力的に描かれていたノーマークスの現実的な問題が表面化します。資金繰りの困難や拠点解体という現実は、理想と現実のギャップを浮き彫りにします。八虎が美大を辞めてノーマークスに参加するかという重大な選択を迫られる場面は、読者にも緊張感を与えます。この選択を通じて、八虎の価値観や将来への考え方が明確になっていく過程が印象的です。

不二桐緒との関係の発展と別れ

不二桐緒との関係がより深まる一方で、最終的に別れの時を迎える展開は感動的です。彼女が八虎に与えた影響と、八虎が彼女から学んだことが明確に示されています。「正しくない場所で得たものは正しくないのか」という八虎の自問自答は、読者にも深い印象を与える哲学的な問いかけとなっています。

八虎の成長と新たな決意

ノーマークスでの体験を通じて、八虎は美術との向き合い方について新たな視点を獲得します。大学での学びとノーマークスでの自由な表現、どちらも価値のあるものとして捉え直す八虎の成熟した判断は、彼の大きな成長を示しています。迷いから抜け出し、肯定的に美術と向き合えるようになった八虎の姿は、読者に希望を与えます。

体験型展示への挑戦

八虎が初めて体験型の展示を行うという新たな挑戦が描かれます。これまでの500枚ドローイングの経験も活かされ、観客との直接的な関わりを持つ作品制作は、八虎にとって大きな転換点となります。「他人の目」を意識した制作への変化は、前巻での教授の問いかけに対する明確な答えとなっています。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の構成力が特に光る巻です。ノーマークス編の完結として、これまでの伏線を回収しながら八虎の成長を描く手法は見事です。また、理想と現実のバランスを取りながら物語を展開する技術も優れており、読者に納得感のある結末を提供しています。八虎の心境変化を表情や行動で細やかに表現する演出も効果的です。

ジャンルとしての評価

青春漫画・成長漫画として非常に完成度の高い内容です。迷いから成長への道筋を説得力を持って描き、主人公の選択に読者が共感できる構成となっています。美術漫画としても、多様な表現の場や価値観を提示することで、芸術の幅広さを示している点で優秀です。現代的なテーマを扱いながら普遍的な魅力も持った作品です。

総合評価

★★★★★ 5/5 ノーマークス編の完結として、八虎の重要な選択と成長が感動的に描かれた傑作です。迷いの期間を経て新たな決意を固める八虎の姿は、多くの読者の心を打つことでしょう。物語の転換点として非常に重要な意味を持つ、シリーズ屈指の名巻です。

こんな人におすすめ

• 人生の重要な選択について考えたい方
• 理想と現実のバランスに悩んでいる方
• 多様な価値観を認める寛容さを学びたい方
• 主人公の大きな成長を見届けたい方