ブルーピリオド 13巻 レビュー：ノーマークス代表・不二桐緒との衝撃的出会い！八虎の新たな視点

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第13巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2022年11月
巻数： 第13巻

あらすじ

藝大2年目で道に迷う矢口八虎は、学外のアート集団「ノーマークス」の活動拠点で不二桐緒と出会います。彼女は八虎に新風を吹き込み、これまでとは異なる視点を提供してくれます。
実態を知らない八虎は魅力を感じつつも関わり方のスタンスを模索し、「罪悪感」をテーマにした課題制作を通じて自分なりの表現を見つけていきます。

見どころ

不二桐緒という魅力的なキャラクター

学外のアート集団「ノーマークス」の代表である不二桐緒は、これまでの八虎の世界にない新しいタイプの人物として登場します。反権威主義的でありながら人を惹きつける魅力を持つ彼女は、八虎に大きな刺激を与えます。「鍵はたぶんいつでもあいてるから」というセリフに象徴される彼女の包容力と肯定感は、迷いの中にいる八虎にとって大きな支えとなります。

ノーマークスという新たな世界

大学とは全く異なる価値観を持つアート集団「ノーマークス」の存在は、八虎の視野を大きく広げます。既存の美術教育システムに疑問を抱いていた八虎にとって、このような自由な表現の場は魅力的に映ります。しかし同時に、その実態や価値観について模索する八虎の慎重さも描かれており、複雑な心境が巧みに表現されています。

「罪悪感」をテーマにした課題制作

八虎が取り組む「罪悪感」をテーマにした課題は、これまでとは異なる深い内容となっています。不二桐緒との出会いやノーマークスでの体験を通じて得た新しい視点を作品に込める八虎の姿は印象的です。「事実と解釈」について考えを深める過程は、読者にも哲学的な思考を促す内容となっており、作品の知的な深さを感じさせます。

犬飼教授からの高評価

万人に等しく厳しいとされる犬飼教授から高評価を得る八虎ですが、その表情は複雑です。これまでとは異なる制作過程で生まれた作品が評価されることの意味について、八虎自身も戸惑いを見せています。この反応は、芸術表現における価値判断の複雑さを示しており、読者にも深い印象を与えます。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の新しいキャラクター創造力が光る巻です。不二桐緒という魅力的なキャラクターを通じて、八虎の世界に新たな風を吹き込む構成は見事です。また、「罪悪感」という抽象的なテーマを具体的な作品制作過程に落とし込む技法も巧妙で、読者にも創作の難しさと面白さを伝えています。ノーマークスという集団の描写も現実味があり、作者の観察眼の鋭さを感じさせます。

ジャンルとしての評価

美術漫画として新たな視点を提供する優秀な内容です。大学という既存の教育システムと、ノーマークスのような自由な表現集団という対比を通じて、芸術教育の多様性を描いています。また、青春漫画としても、迷いの中から新たな可能性を見出していく八虎の成長が魅力的に描かれており、読者に希望を与える構成となっています。

総合評価

★★★★★ 5/5 シリーズの中でも特に重要な転換点となる傑作です。不二桐緒という新キャラクターの魅力と、ノーマークスという新たな世界の提示により、物語に大きな広がりをもたらしました。八虎の成長と新たな視点の獲得が感動的に描かれており、次巻への期待を大いに高める充実した内容です。

こんな人におすすめ

• 既存の枠組みに疑問を感じている方
• 多様な価値観に触れたい方
• 芸術表現の自由さについて考えたい方
• キャラクターの新たな出会いと成長を楽しみたい方