東京喰種トーキョーグール:re 6巻 レビュー：月山習の最後と新章の始まり！琲世の記憶に重大な変化

作品概要

タイトル： 東京喰種トーキョーグール:re
作者： 石田スイ
出版社： 集英社（ヤングジャンプコミックス）
発売日： 2016年4月
巻数： 6巻

あらすじ

月山家殲滅戦がついに終結を迎え、月山習の運命が決定されます。家族と仲間たちの犠牲の上に生き残った習は、自分なりの答えを見つけて新たな道を歩み始めます。

一方、佐々木琲世の記憶に決定的な変化が起こり、彼の中で二つの人格が激しく葛藤することになります。CCGでは新たな大規模作戦の準備が進められ、物語は次なる重要な局面へと向かっていきます。

作家高槻泉の存在も、物語に新たな波紋を投げかけます。

見どころ

月山習の成長と新たな決意

月山家殲滅戦を経て、月山習が見せる劇的な成長と変化が印象的です。家族や仲間たちの犠牲を無駄にしないため、そして自分自身のために生きる決意を固める習の姿は感動的です。これまでの奇抜で自己中心的なキャラクターから、深い愛情と責任感を持つ人物へと変貌する過程が、非常に丁寧に描かれています。

琲世の記憶覚醒と人格の分裂

この巻で琲世の記憶問題が新たな段階に突入します。封印されていた記憶が蘇り始めることで、彼の中で二つの人格が激しく対立し始めます。佐々木琲世としての現在の自分と、失われた過去の自分との間で引き裂かれる苦悩が、読者の心を強く揺さぶります。この内面の葛藤の描写は、シリーズ屈指の名シーンです。

高槻泉の正体への示唆

人気作家高槻泉の存在が物語により深く関わってくることが示唆されます。彼女の作品「王のビレイグ」が社会に与える影響や、その背後に隠された真実への手がかりが散りばめられており、読者の好奇心を大いに刺激します。文学と現実の境界線が曖昧になる展開が興味深く描かれています。

クインクス班の絆の深化

月山家殲滅戦を共に戦い抜いたクインクス班のメンバーたちの絆が、これまで以上に深まっていきます。瓜江久生のリーダーシップの向上、米林才子の仲間への想い、不知吟士の純粋な優しさ、そして六月透の複雑な感情など、それぞれの成長と相互理解が美しく描かれています。

次なる作戦への布石

CCG内部では、アオギリの樹に対する大規模作戦の準備が着々と進められています。流島への上陸作戦という、シリーズ最大規模の作戦への布石が効果的に配置されており、読者の期待感を大いに高めます。組織の戦略的思考と、各部署の連携の様子も興味深く描写されています。

作者の特色・技法

石田スイの心理描写の技術が最高レベルに達した巻の一つです。琲世の内面の葛藤を視覚的かつ感情的に表現する手法は圧巻で、読者は彼の苦悩を直接的に体感することができます。また、月山習の成長過程を描く技術も見事で、キャラクターの内面的変化を説得力を持って表現しています。

ジャンルとしての評価

ダークファンタジーとしての深みに加えて、心理サスペンスとしての要素も強くなっており、ジャンルとしての幅を大きく広げています。キャラクターの内面の複雑さと、社会的なテーマの組み合わせが、作品により高い文学性を与えています。

総合評価

★★★★★ 5/5 月山家編の感動的な完結と、新たな展開への完璧な橋渡しを成し遂げた傑作巻です。キャラクターの成長、心理描写の深さ、そして次への期待感のすべてが高次元で融合しており、読者に深い満足感と強い印象を与えます。シリーズの重要な転換点として、非常に優秀な内容となっています。

こんな人におすすめ

• キャラクターの成長と変化を重視する方
• 琲世の記憶と人格の問題に興味がある方
• 月山習の新たな一面を見たい方
• 次なる大規模展開への期待感を求める方