ブルーピリオド 6巻 レビュー：藝大二次試験の緊迫！体調不良に負けない八虎の執念

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第6巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2019年12月
巻数： 第6巻

あらすじ

藝大二次試験当日を迎えた矢口八虎。しかし試験開始直後、目に激痛が走り動けなくなってしまいます。
ストレスによる体調不良に襲われながらも、八虎は試験課題に臨むことを決意。
予備校講師大葉が提案する「飛び道具」とは何か。そして試験2日目、テーマを決めた八虎は他と差を付けるため豪快な秘策に打って出ます。

見どころ

極限状態での受験生の姿

第6巻の最大の見どころは、体調不良という極限状態で試験に挑む八虎の姿です。目の激痛で集中できない中、それでも諦めずに試験課題と向き合う八虎の執念は圧巻です。受験生なら誰もが経験しうる「本番での体調不良」というリアルな状況設定により、読者は手に汗握る緊迫感を味わえます。八虎の「実力を出し切れたとは言えないが、それも含めて実力」という前向きな姿勢が印象的に描かれています。

大葉講師の「飛び道具」戦略

予備校講師大葉が提案する「飛び道具」の概念が興味深く展開されます。体調不良で通常の実力を発揮できない八虎に対し、状況を逆手に取った戦略的なアプローチを提示する大葉の指導法は、美術教育の奥深さを感じさせます。単純な技術指導ではなく、状況に応じた柔軟な思考力を養う指導として、非常に印象的に描かれています。

藝大受験の現実的な描写

二次試験の具体的な流れや雰囲気、受験生たちの緊張感など、藝大受験の実態がリアルに描写されています。作者の実体験に基づいた詳細な描写により、美大受験の厳しさと特殊性が手に取るように伝わってきます。試験会場の空気感や、受験生それぞれの作品への取り組み方の違いなど、細部まで丁寧に表現されています。

八虎の成長と決意

これまでの積み重ねが試される重要な場面で、八虎の人間的な成長が如実に表れています。体調不良というハンディキャップを背負いながらも、自分なりの表現方法を見つけ出そうとする姿勢は、読者に深い感動を与えます。「好きなこと」への純粋な想いが、困難な状況を乗り越える原動力となる様子が美しく描かれています。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の演出力が特に光る巻です。体調不良時の八虎の表情や動作、試験会場の緊迫した雰囲気など、読者がその場にいるかのような臨場感のある描写が秀逸です。また、コマ割りを効果的に使って時間の経過と八虎の心境変化を表現する技法も見事で、漫画としての完成度の高さを感じさせます。

ジャンルとしての評価

受験漫画・青春漫画として非常に完成度の高い内容です。単なる成功談ではなく、現実的な困難や挫折も含めて描かれているため、読者の共感を呼びやすい構成となっています。美術という特殊な分野を扱いながらも、努力と根性という普遍的なテーマが貫かれており、ジャンルの王道を踏まえた優秀な作品と評価できます。

総合評価

★★★★★ 5/5 藝大受験編のクライマックスにふさわしい、緊迫感と感動に満ちた傑作です。体調不良という予期せぬ困難に直面しながらも、最後まで諦めない八虎の姿は多くの読者の心を打つことでしょう。受験経験者はもちろん、何かに真剣に取り組んだ経験のある人なら誰もが感動できる普遍的な名作です。

こんな人におすすめ

• 受験や就活などの重要な場面を控えている学生
• 困難な状況でも諦めない主人公を応援したい方
• リアルな美大受験の雰囲気を知りたい方
• 青春スポ根漫画が好きな方