ブルーピリオド 7巻 レビュー：藝大合格から新たなスタート！大学生活での挫折と成長

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第7巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2020年6月
巻数： 第7巻

あらすじ

悲願の藝大現役合格を果たした矢口八虎。しかし憧れの大学生活は想像以上に厳しいものでした。レベルの高い同級生たちに囲まれ、自分の絵に自信を持てない八虎。
教授からの厳しい指導と鋭い指摘も、彼にとって大きな壁となります。それでも夏休みの「藝大名物・神輿作り」を通して、同級生たちとのチームワークを築き、少しずつ心を開いていきます。

見どころ

憧れと現実のギャップ

第7巻の核心は、藝大合格という目標を達成した後の「燃え尽き症候群」的な状況です。受験時代の明確な目標がなくなり、周囲のレベルの高さに圧倒される八虎の姿は、多くの読者が共感できる普遍的な体験として描かれています。「自分はこの中で何ができるのか」という八虎の葛藤は、新しい環境に飛び込んだ誰もが感じる不安を的確に表現しています。

藝大の厳しい現実

教授からの容赦ない批評や、「なぜこれを描いたのか」という鋭い問いかけが、八虎に「自分の作品が単なる技術の寄せ集めに過ぎない」ことを気づかせる展開が印象的です。美術大学での教育の厳しさと深さがリアルに描かれており、作者の実体験に基づいた説得力のある描写となっています。単純な技術習得ではない、芸術表現の本質的な部分に迫る内容が描かれています。

同級生たちとの新たな関係性

個性や技術が突出した同級生たちとの出会いが、八虎の世界を大きく広げます。それぞれが異なる背景や価値観を持つ仲間たちとの交流を通じて、八虎は自分の居場所や価値を見つけていく過程が丁寧に描かれています。競争相手であると同時に理解者でもある同級生たちとの微妙な関係性が、大学生活のリアルな一面として表現されています。

「神輿作り」を通じたチームワーク

藝大名物の「神輿作り」エピソードは、八虎が同級生たちと真の絆を築く重要な場面です。個人制作中心だった高校時代とは異なり、チーム制作を通じて新たな発見や成長を遂げる八虎の姿が印象的に描かれています。協力することの大切さと、それぞれの個性を活かした共同作業の魅力が巧みに表現されています。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の心理描写の巧みさが際立つ巻です。合格の喜びから一転して自信を失う八虎の複雑な心境を、表情の変化や独白を通じて繊細に表現されています。また、藝大の校舎や制作風景など、背景描写も非常に詳細で、読者が実際にその場にいるような没入感を与えています。

ジャンルとしての評価

大学生活をテーマにした青春漫画として、非常にリアリティのある作品です。受験合格がゴールではなく、むしろ新たなスタートであることを描いた点で、従来の受験漫画とは一線を画します。美大という特殊な環境を舞台にしながらも、新しい環境での適応という普遍的なテーマを扱っており、幅広い読者に響く内容となっています。

総合評価

★★★★☆ 4/5 受験編から大学編への転換点として、非常に重要な意味を持つ巻です。目標を達成した後の新たな課題や、より高いレベルでの競争など、成長に伴う悩みが的確に描かれています。八虎の人間的な成長と、物語の新たな展開への期待を高める、シリーズの重要なターニングポイントとなる巻です。

こんな人におすすめ

• 大学生活や新しい環境への不安を抱えている方
• 高いレベルの競争環境に身を置く経験のある方
• チームワークや協調性の大切さを感じたい方
• 目標達成後の燃え尽き症候群に共感できる方