ブルーピリオド 3巻 レビュー：予備校での才能との出会い！天才・世田介が見せる圧倒的画力

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第3巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2018年12月
巻数： 第3巻

あらすじ

藝大を目指すことを決意した矢口八虎は、美大専門の予備校に通い始めます。そこで全国から集まった美術の才能を持つ受験生たちと出会い、新たな刺激と挫折を経験することになります。
特に圧倒的なデッサン力を持つ高橋世田介との出会いは、八虎に「才能」の壁を痛感させ、同時に新たな努力への意欲を掻き立てるのです。

見どころ

天才・世田介との衝撃的な出会い

第3巻最大の見どころは、高橋世田介という天才的な技術を持つ同級生との出会いです。圧倒的な画力を持ちながらも孤独で他人に心を開かない彼のキャラクターは非常に印象的です。八虎が初めて世田介の作品を見た時の衝撃は、「自分が描いているのはただの模写に過ぎない」という痛烈な自己認識をもたらします。この場面は、努力だけでは埋められない「才能」の存在を突きつける重要なシーンとして描かれています。

予備校という新たな競争環境

美大専門予備校という、より専門的で競争の激しい環境に身を置いた八虎の戸惑いと適応が丁寧に描かれています。高校の美術部とは全く異なるレベルの高い環境で、八虎は自分の実力不足を痛感します。同時に、同じ目標を持つ仲間たちとの出会いもあり、切磋琢磨する関係性が生まれていく過程が興味深く描かれています。

F100号キャンバスへの挑戦

予備校での大型課題として、F100号という大きなキャンバスに挑戦する八虎の奮闘が描かれています。これまでとは全く異なるスケールでの制作に取り組む八虎の姿は、読者にも緊張感と達成感を与えます。特に作品完成時の描写は圧巻で、八虎の成長と「対応力」の向上が如実に表現されています。

才能と努力のテーマ

第3巻では「才能」と「努力」の関係が深く掘り下げられています。世田介のような天才的な技術を目の当たりにした八虎が、それでも諦めずに自分なりの表現方法を見つけようとする姿は感動的です。才能への憧れと同時に、努力によって乗り越えられる部分があることも示されており、読者に希望を与える構成となっています。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の画力が特に光る巻です。世田介の圧倒的なデッサンや八虎のF100号作品など、作中の美術作品の完成度が非常に高く、読者も実際にその場にいるような臨場感を味わえます。また、八虎の挫折と成長を表情の変化で繊細に表現する技法も見事で、感情の起伏が手に取るように伝わってきます。

ジャンルとしての評価

美術漫画として非常に専門性の高い内容でありながら、青春漫画としての普遍的な魅力も兼ね備えています。「才能」という避けて通れないテーマに正面から向き合い、それでも努力することの意義を描いた点で、ジャンルの中でも特に印象深い作品となっています。競争環境での成長という要素も、多くの読者に共感を呼ぶ構成です。

総合評価

★★★★★ 5/5 シリーズの中でも特に重要なターニングポイントとなる巻です。八虎の大きな成長と、物語のテーマがより深化した内容で、読者に強いインパクトを与えます。才能の壁に直面しながらも諦めない八虎の姿は、多くの人の心を打つ普遍的な感動を提供してくれます。美術漫画としても青春漫画としても最高レベルの出来栄えです。

こんな人におすすめ

• 才能と努力の関係について考えたい方
• 競争の激しい環境での成長ストーリーが好きな方
• 美術の専門的な技術や知識に興味のある方
• 挫折を乗り越える主人公を応援したい方