作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 26
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2007年10月
巻数: 第26巻
あらすじ
宮殿内での戦いが激化する中、ゴンとキルアはついにネフェルピトーと遭遇します。ユピーはシュートとの戦いで圧倒的な力を見せつけ、続いてナックルとの激戦に突入。
ゼノとシルバは任務完了により戦線を離脱し、イカルゴは新たな敵ブロヴーダと遭遇します。
各戦線で運命的な対決が始まり、それぞれのキャラクターの真の実力と覚悟が試される重要な転換点となる一冊です。
見どころ
ゴンとピトーの因縁の対峙
この巻最大の見どころは、ゴンとネフェルピトーがついに直接対峙することです。カイトを奪った因縁の相手との再会は、ゴンの内面に激しい感情の嵐を巻き起こします。しかし、ピトーがコムギの治療に専念している状況により、すぐには戦闘に入れない複雑な状況が生まれます。この緊張感あふれる膠着状態は、読者の心を強く掴む印象的な場面となっており、両者の心理的駆け引きが見事に描かれています。
ユピー対シュートの圧倒的実力差
ユピーとシュートの戦いは、護衛軍の圧倒的な戦闘力を如実に示す重要な場面です。シュートの「暗い宿(ホテルラフレシア)」による巧妙な戦術も、ユピーの純粋な破壊力の前では限界を露呈します。特にユピーが戦闘中に進化し続け、より効率的な戦闘スタイルを獲得していく様子は、キメラアントの恐ろしい適応能力を表現した印象的な展開となっています。
ナックル参戦と「天上不知唯我独損」の発動
シュートが苦戦する中、ナックルが参戦し、彼の念能力「天上不知唯我独損(ハコワレ)」が本格的に発動されます。金利システムによる独特な戦闘スタイルは、従来のバトル漫画にはない新しさを提供しており、読者に新鮮な驚きを与えます。特にユピーという強大な敵に対して、直接的な攻撃ではなく、システマティックなアプローチで挑むナックルの戦略性は、念能力バトルの奥深さを表現した名場面です。
ゼノとシルバの撤退と職業意識
ゼノとシルバが任務完了により戦線を離脱する場面は、プロの暗殺者としての職業意識の高さを表現した重要なシーンです。個人的な感情を排し、契約に基づいて行動する彼らの姿勢は、ゾルディック家の価値観と職業倫理を如実に示しています。特にゼノの「仕事は仕事」という割り切った態度は、プロフェッショナルとしての徹底した姿勢を印象づける名場面となっています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の緊張感演出の技術が特に光る巻です。ゴンとピトーの対峙シーンでは、セリフを最小限に抑えながら、表情と構図だけで両者の心理状態を見事に表現しています。また、ユピーとの戦闘シーンでは、圧倒的な力の差を視覚的に分かりやすく描写し、読者にリアルな戦場感を提供しています。複数の戦線を同時に描く構成力も秀逸で、各キャラクターの状況を整理して提示する技術の高さが印象的です。
ジャンルとしての評価
バトル漫画における緊張感とキャラクター心理の融合という点で、ジャンルの頂点を極めた作品です。単純な力の勝負だけでなく、それぞれのキャラクターが抱える感情や動機が戦闘に深く関わることで、読者により深い没入感を提供しています。特にゴンとピトーの膠着状態は、心理的な駆け引きがいかに重要かを示す優れた例として、バトル漫画の新しい表現方法を提示しています。
総合評価
★★★★☆ 4/5 キメラアント編の中でも特に緊張感に満ちた展開が続く重要な巻です。ゴンとピトーの因縁の対峙、ユピーの圧倒的な強さ、そして各キャラクターの成長が巧みに描かれており、読者を最後まで引き込む構成となっています。特に心理的な駆け引きと物理的な戦闘のバランスが絶妙で、HUNTER×HUNTERの多面的な魅力を存分に味わえる優秀な一冊です。
こんな人におすすめ
- 因縁の対決と心理的駆け引きを重視する方
- 圧倒的な実力差を描いた戦闘シーンを楽しみたい方
- 独創的な念能力システムに興味がある方
- プロフェッショナルな職業意識を描いた物語を求める方