ブルーピリオド 10巻 レビュー：世田介の本音と八虎との友情回復！「絵は好きか」の答え

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第10巻 作者： 山口つばさ 出版社： 講談社（アフタヌーンKC） 発売日： 2021年5月 巻数： 第10巻（全17巻既刊・連載中）

あらすじ

前巻で八虎から「絵は好きか」と問われた高橋世田介。この問いかけをきっかけに、世田介は自分の内面と向き合うことになります。1枚のウサギの絵と八虎の言葉によって、世田介は初めて「絵を描けてよかった」と感じることができ、二人の友情も深まっていきます。
進級を果たした八虎は橋田悠とともに絵画教室でアルバイトを始めます。

見どころ

世田介の心境変化と成長

第10巻のメインテーマは、高橋世田介の苦悩からの解放です。「絵は好きか」という八虎の問いかけに対し、世田介が自分なりの答えを見つけ出す過程が感動的に描かれています。これまで技術的な完璧さを求め続けていた世田介が、純粋に「描く喜び」を再発見する瞬間は、読者にも深い感動を与えます。1枚のウサギの絵という些細なきっかけから生まれる大きな変化は、芸術の本質的な魅力を物語っています。

八虎と世田介の友情の深化

前巻で険悪になった二人の関係が、お互いの理解を通じて修復されていく過程が美しく描かれています。八虎の純粋な想いと世田介の素直さが結びついて、より深い友情が生まれる様子は読者の心を温めます。競争相手でありながら、お互いの成長を支え合える関係性に発展していく二人の姿は、真の友情の在り方を示しています。

絵画教室でのアルバイト体験

八虎と橋田悠が絵画教室でアルバイトを始める新しい展開が興味深く描かれています。子どもたちとの関わりを通じて、八虎が新たな刺激を受ける様子が印象的です。教える立場に立つことで、自分自身の美術への理解も深まっていく八虎の成長過程が丁寧に表現されています。このエピソードは、美術の多様な楽しみ方を提示する重要な要素となっています。

橋田悠の感情表現

普段は冷静な橋田悠が感情を顕にする場面が印象的に描かれています。彼女の内面の変化や、八虎への想いなども含めて、キャラクターとしての深みが増していく様子が見どころです。絵画教室でのアルバイトを通じて見せる彼女の新たな一面は、読者にとって新鮮な驚きとなるでしょう。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の感情表現の技術が特に光る巻です。世田介の心境変化を表現する繊細な描写や、八虎との和解シーンでの温かい雰囲気作りは見事です。また、絵画教室での子どもたちとの交流シーンでは、コミカルな要素も効果的に取り入れられており、作品全体のトーンバランスが絶妙に保たれています。

ジャンルとしての評価

友情漫画・青春漫画として非常に完成度の高い内容です。前巻で生まれた対立を、お互いの理解と成長を通じて解決する構成は、王道でありながら説得力があります。美術を通じた人間関係の描写も深みがあり、専門的な内容と普遍的な感情のバランスが見事に取れた優秀作品です。

総合評価

★★★★☆ 4.5/5 前巻で生まれた緊張感を見事に解決し、キャラクターたちの成長と友情の深化を感動的に描いた優秀な巻です。世田介の心境変化は特に印象的で、多くの読者の共感を呼ぶことでしょう。新しい展開への期待も高まる、シリーズの中でも重要な位置を占める巻として高く評価できます。

こんな人におすすめ

• 友情の修復過程を描いた作品が好きな方
• キャラクターの内面的成長を重視する方
• 美術を通じた教育や指導に興味のある方
• 心温まる人間関係を楽しみたい方