ブルーピリオド 11巻 レビュー：絵画教室バイトで子どもたちから学ぶ！「ピカソはなぜすごいのか」

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第11巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2021年9月
巻数： 第11巻

あらすじ

金欠に悩む矢口八虎が応募したアルバイト先は、なんと高校時代の恩師佐伯先生が開く絵画教室でした。小さな子どもたちを相手に四苦八苦する八虎ですが、中でも問題児の翔也くんから「ピカソはなぜすごいのか？」という難しい質問を投げかけられます。
答えに窮した八虎は深く調べるものの理解できず、博識なある人物に相談することになります。

見どころ

佐伯先生との再会

高校時代の美術教師佐伯先生との偶然の再会が、物語に温かい雰囲気をもたらします。八虎の美術への道筋を作ってくれた恩師との関係が、大学生になった今も続いているという設定は、読者に懐かしさと安心感を与えます。佐伯先生の変わらぬ人柄と、八虎への継続的な関心が、八虎の成長を支える重要な要素として機能しています。

子どもたちとの交流から得る学び

絵画教室での子どもたちとの交流は、八虎にとって予想外の学びの機会となります。特に問題児とされる翔也くんとのやり取りは印象深く、子どもたちの純粋な疑問や感性が、大学で専門的に美術を学ぶ八虎に新たな気づきを与えています。教える立場に立つことで、自分自身の理解を深めることになるという教育の本質が巧みに描かれています。

「ピカソはなぜすごいのか」という根本的な問い

翔也くんからの「ピカソはなぜすごいのか？」という質問は、美術史における根本的な問いかけです。八虎が必死に調べても納得のいく答えを見つけられない過程は、芸術の価値や意味について考えさせられる重要なエピソードとなっています。この問いを通じて、美術の奥深さと複雑さが読者にも伝わってきます。

博識な人物への相談

答えに窮した八虎が「博識なある人物」に相談するという展開は、次巻への期待を高める要素となっています。八虎の周りには多くの専門家や経験豊富な人物がいることが示されており、彼らとの対話を通じてさらなる学びが得られる可能性が示唆されています。この構成は、知識の継承と学習の連続性を表現しています。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の教育現場への深い理解が表れた巻です。子どもたちとの交流シーンでは、それぞれの個性を活かしたキャラクター描写が秀逸で、読者も実際にその場にいるような親しみやすさを感じられます。また、八虎の困惑や焦りを表現する演出技法も見事で、読者の感情移入を促進しています。

ジャンルとしての評価

教育漫画・美術漫画として非常に価値の高い内容です。専門的な美術知識を、子どもたちとの日常的な交流を通じて自然に提示する構成は巧妙で、読者も楽しみながら学ぶことができます。また、世代を超えた学びの交換という普遍的なテーマも含んでおり、幅広い読者層にアピールする内容となっています。

総合評価

★★★★☆ 4/5 八虎の新たな一面と、美術教育の本質に迫る興味深い巻です。子どもたちとの交流を通じて描かれる八虎の成長と、美術の根本的な価値について考えさせられる内容は、読者に深い印象を与えます。次巻での「博識な人物」との対話への期待も高まる、充実した内容の巻です。

こんな人におすすめ

• 教育や指導経験のある方
• 子どもとの関わりを楽しみたい方
• 美術の価値や意味について考えたい方
• 世代を超えた交流を描いた作品が好きな方