HUNTER×HUNTER 38巻レビュー:マフィア抗争激化と旅団の過去への回想

少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 38
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2024年9月
巻数: 第38巻

あらすじ

暗黒大陸を目指す船内での三つ巴のマフィア抗争がさらに激化します。
2つの組が共闘し、さらにヒソカを追う幻影旅団も抗争に加わり、エイ=イ一家を狩り始めます。
その最中、ノブナガは幻影旅団結成の経緯を回想し、旅団の原点と絆の深さが明らかになります。
船内の混乱が極限に達する中、各勢力の思惑が複雑に絡み合い、予測不可能な展開が続く最新巻です。

見どころ

マフィア三つ巴抗争の激化と同盟

船内のマフィア抗争がさらに激しさを増し、シュウ=ウ一家シャ=ア一家が共闘してエイ=イ一家に対抗する構図が形成されます。この同盟関係の変化は、単純な三つ巴から二対一の構造へと状況を変化させ、抗争の行方をより複雑で予測困難なものにしています。特に各組織の利害関係と生存戦略が絡み合う様子は、リアルな組織犯罪の描写として印象深く描かれています。

幻影旅団のエイ=イ一家狩り開始

幻影旅団エイ=イ一家を標的として本格的な狩りを開始する展開は、この巻の最大の見どころです。旅団の圧倒的な戦闘力がマフィア抗争に投入されることで、船内の勢力バランスが大きく変化します。特に旅団メンバーの冷酷で効率的な戦闘スタイルと、マフィアの組織的な抵抗の対比は、それぞれの集団の特性を際立たせる効果的な演出となっています。

ノブナガによる旅団結成の回想

ノブナガが語る幻影旅団結成の経緯は、この巻で最も感動的で重要なエピソードです。流星街での厳しい生活環境の中で、仲間たちがどのようにして結束を深め、現在の旅団を形成していったかが詳細に描かれます。特にクロロのリーダーとしての資質や、メンバー同士の深い絆の根源が明かされることで、旅団という組織の本質的な強さが理解できる内容となっています。

船内情勢のさらなる複雑化

王位継承戦、マフィア抗争、旅団の活動という三つの大きな流れが相互に影響し合い、船内の情勢はより一層複雑化しています。それぞれの勢力が独自の目的を持ちながらも、他の勢力の動向に影響を受けて戦略を変更せざるを得ない状況は、現実的な政治・軍事情勢の複雑さを反映した巧妙な構成となっています。読者は各勢力の思惑を追いながら、全体の流れを把握する知的な楽しさを味わうことができます。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の回想シーン演出技術が特に光る巻です。ノブナガの回想を通じて描かれる旅団の過去は、現在の物語と有機的に結びつけられており、単なる説明ではなく感情的な深みを持った内容となっています。また、複数の組織が同時に活動する現在の混沌とした状況と、過去の純粋な仲間意識の対比により、時間軸を巧みに使った構成の妙を見せています。戦闘シーンと心理描写のバランスも絶妙です。

ジャンルとしての評価

組織犯罪、政治サスペンス、回想ドラマという異なる要素を一つの物語内で効果的に組み合わせた、高度な構成力を持つ作品です。単なるバトル漫画の枠を完全に超越し、社会派ドラマとしての側面も強く持った成熟した内容となっています。特に過去と現在を往復しながら物語を進める手法は、読者により深い理解と感情移入を促す効果的な技法として、ジャンルの新たな表現可能性を示しています。

総合評価

★★★★★ 5/5 HUNTER×HUNTER最新巻として、シリーズの集大成的な魅力を発揮した傑作です。現在進行する複雑な抗争と、旅団の感動的な過去が見事に織り合わされ、読者に多層的な楽しさと感動を提供しています。特にノブナガの回想による旅団の原点の描写は、長年のファンにとって感涙必至の内容となっており、冨樫先生の物語構成力の頂点を示す名作として、強く推奨される一冊です。

こんな人におすすめ

  • 幻影旅団の過去と原点に興味がある方
  • 複雑な組織間抗争を楽しみたい方
  • 感動的な回想シーンを重視する方
  • HUNTER×HUNTERの最新展開を追いたい全てのファン

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