作品概要
タイトル: 光が死んだ夏
作者: モクモクれん
出版社: KADOKAWA(角川コミックス・エース)
発売日: 2022年3月
巻数: 第1巻
あらすじ
三重県の山間部にある閉塞感漂う集落で育った幼馴染の少年、よしきとヒカル。
ずっと一緒に過ごしてきた同い年の2人でしたが、高校生になったヒカルが山で1週間失踪し、戻ってきた後の様子に違和感を覚えたよしきは確信します。
「お前、やっぱ光ちゃうやろ」——


友人の姿をした”ナニカ”との、変わらない日常が始まります。
見どころ
キャラクター設定の絶妙な魅力
よしきの複雑な心境が見事に描かれています。親友が別の存在にすり替わったという恐怖と、それでも一緒にいたいという願望の間で揺れ動く心理描写が秀逸です。

一方、ヒカルの姿をしたナニカの不気味さと同時に感じる愛おしさが、読者を物語の世界へと引き込みます。関西弁で語られる二人の会話は親しみやすく、日常と非日常の境界線を曖昧にする効果を生んでいます。


独特な世界観と演出技法
夏の蝉の声、田舎の閉塞感、そして静寂を破る不穏な音——。モクモクれんの巧みな演出により、読者は作品の世界に没入できます。特に効果音の表現が独特で、わざと馴染まないフォントを使用することで得体の知れない雰囲気を醸し出しています。日常の中に潜む非日常の恐怖を、視覚的にも感覚的にも表現する手法は圧巻です。

ミスマッチが生む新感覚ホラー
明るい夏の季節と暗い内容のミスマッチが、本作の最大の魅力です。青春という輝かしい時期に降りかかる得体の知れない恐怖が、独特な読後感を与えてくれます。ホラーでありながらBL要素も感じられる人外ものとしても、従来のジャンルの枠組みを超えた新しいタイプの作品として注目されています。

作者の特色・技法
モクモクれんは本作で商業連載デビューを果たしましたが、その画力と構成力の完成度はかなり高いです。フルデジタルで描かれた繊細な作画と、1巻をほぼ一人で手がけた熱意が伝わってきます。コマ割りや見せ方にも工夫が凝らされており、静と動のメリハリが効いた演出で読者を飽きさせません。

ジャンルとしての評価
青春ホラーというジャンルの中でも、本作は独自のポジションを確立しています。王道的なホラー演出を避け、日常に潜む不気味さや心理的な恐怖に焦点を当てることで、より深い余韻を残す作品になっています。人外×青春という組み合わせの斬新さも、ジャンルに新たな可能性を秘めています。
総合評価
★★★★☆ 4/5
商業デビュー作とは思えない完成度の高さと、従来のホラー作品にはない独特な魅力を持つ作品です。読者を選ぶ作品ではありますが、ハマる人にはとことんハマる中毒性があります。続きが気になる引きの強さもあり、シリーズ全体への期待を大いに高めてくれています。
こんな人におすすめ
- 従来のホラー作品では物足りない方
- 青春ものと人外要素の組み合わせに興味がある方
- 心理的な恐怖やじわじわとした不気味さを楽しみたい方
- 独特な世界観と演出を求める漫画愛好者の方