BEASTARS 3巻 レビュー：レゴシとハルの恋の行方は？隕石祭で加速する動物たちの青春

作品概要

タイトル： BEASTARS 3巻
作者： 板垣巴留
出版社： 秋田書店（少年チャンピオン・コミックス）
発売日： 2017年7月
巻数： 第3巻

あらすじ

雌ウサギのハルが気になって仕方ないレゴシですが、異性の前ではいつも以上にトンチンカンな行動ばかり。そんな中、学園では年に一度の大イベント「隕石祭」の準備が始まります。
この祭りでろうそくを置いたカップルは結ばれると言われており、恋人たちの一大イベントとして注目されています。
レゴシとハル、そして周囲の動物たちの複雑な感情が絡み合っていく展開が描かれます。

見どころ

レゴシの不器用な恋心

レゴシのハルに対する恋心が本格的に描かれ、彼の不器用で純粋な想いが愛らしく表現されています。肉食獣である自分と草食獣であるハルとの間にある壁を意識しながらも、抑えきれない感情に翻弄される姿は、読者の心を強く打ちます。名前すら聞けない初心さが微笑ましいです。

ハルの複雑な立場と心境

ウサギのハルというキャラクターがより深く掘り下げられ、彼女なりの事情や心境が明らかになっていきます。表面的には冷たい態度を取りながらも、その奥にある複雑な感情や過去の経験が垣間見え、キャラクターとしての魅力が大幅に増しています。

隕石祭という幻想的な舞台装置

学園の年中行事である「隕石祭」の描写が美しく、恋人たちのロマンチックなイベントとして効果的に機能しています。装飾の準備風景や祭りの幻想的な雰囲気が、動物たちの青春の甘酸っぱさを演出し、物語により深い情感を与えています。

種族を超えた恋愛の困難さ

肉食獣と草食獣という設定を活かし、種族を超えた恋愛の難しさが現実的に描かれています。社会的な偏見や生物学的な違いによる障壁が、現代社会の様々な差別問題と重なり、読者に深い考察を促します。

作者の特色・技法

画力：恋愛感情を表現する際の繊細な表情描写が際立っています。特にレゴシの照れや戸惑いの表情、ハルの複雑な心境を表す目の描き方など、感情表現の技術がさらに向上しています。

演出：隕石祭の幻想的な雰囲気作りや、二人だけの空間での心理的距離感の表現が秀逸です。静かな場面でのコマの使い方や、心情を表現するための効果的な背景処理が印象的です。

ジャンルとしての評価

学園恋愛ものとしての要素が強化され、従来の動物擬人化作品では描かれなかった繊細な恋愛心理が丁寧に表現されています。隕石祭という舞台設定も効果的に活用され、青春群像劇としての完成度がさらに高まった巻と言えるでしょう。

総合評価

★★★★☆ 4/5
恋愛要素が本格化し、レゴシとハルの関係性に大きな進展が見られる重要な巻です。不器用な恋心の描写が非常に愛らしく、読者の心を強く掴みます。隕石祭という美しい舞台設定も相まって、青春の甘酸っぱさが存分に表現された魅力的な内容となっています。種族を超えた恋愛というテーマも深く掘り下げられています。

こんな人におすすめ

• 純粋で不器用な恋愛ストーリーが好きな読者
• 学園祭などのイベント描写を楽しみたい方
• 種族差別をテーマにした作品に興味がある読者
• 心理描写が丁寧な恋愛漫画を求める方