作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 11
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2001年2月
巻数: 第11巻
あらすじ
ウボォーギンを失い激昂する幻影旅団。ゴンとキルアは巧妙な脱出劇で旅団のアジトから抜け出し、クラピカは十老頭が雇った暗殺チーム「ゾルディック家」と合流します。
ついにシルバとゼノのゾルディック父子がクロロとの直接対決に臨み、一方ではイルミが十老頭を始末するという衝撃的な展開が待ち受けています。
旅団の故郷「流星街」の謎も明かされ、複雑に絡み合う各勢力の思惑が頂点に達する緊迫のストーリーです。
見どころ
ゴンとキルアの機転あふれる脱出劇
この巻冒頭の見どころは、ゴンとキルアが旅団のアジトから脱出する際の機転と連携です。ノブナガの監視下にありながら、ゴンの純粋さとキルアの冷静な判断力を活かした巧妙な作戦は読者を引き込みます。特に「出口がないなら作るまで」という発想で壁をぶち破る場面は、二人の成長と絆の深さを象徴する印象的なシーンとなっています。彼らの脱出成功は、物語に希望の光をもたらす重要な展開です。
シルバ・ゼノ対クロロの念能力頂上決戦
ゾルディック家の当主シルバとゼノによるクロロとの戦いは、シリーズ屈指の高レベル念能力バトルとして描かれます。ゼノの「牙突」や「龍頭戯画(ドラゴンヘッド)」、シルバの圧倒的な破壊力、そしてクロロの盗賊の極意「スキルハンター」の応用技など、それぞれの能力の特徴を活かした戦術的な攻防は圧巻です。特に三人それぞれの戦闘経験と技術の高さが如実に表現された名勝負として、読者に深い印象を与えます。
流星街の設定と旅団の結束力
この巻で明かされる幻影旅団の故郷「流星街」の設定は、作品世界の深さを示す重要な要素です。世界中のゴミが集められる巨大なゴミ処理場で育った彼らの過去と、そこから生まれた絆の強さが描かれています。旅団メンバーたちの「流星街の住人に手を出せば、必ず報復する」という掟は、彼らが単なる盗賊集団ではなく、深い結束で結ばれた「家族」であることを印象づけています。
イルミによる十老頭始末の衝撃
イルミが十老頭を始末するという衝撃的な展開は、物語の構造を根底から覆す重要な転換点です。マフィアと旅団の対立構造が一瞬で崩壊し、黒幕の存在が示唆される展開は読者に大きな驚きを与えます。イルミの冷徹な暗殺技術と、依頼を完遂する職業意識の高さが描かれ、ゾルディック家の恐ろしさを改めて印象づける場面となっています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の構成力と演出技法が特に光る巻です。複数の勢力が同時に動く複雑な展開を、読者が混乱することなく理解できるよう緻密に計算された構成は見事です。特にシルバ・ゼノ対クロロの戦闘シーンでは、三者三様の戦闘スタイルの違いを視覚的に分かりやすく表現し、それぞれの個性と実力を際立たせています。また、流星街の描写では廃墟的な風景の中に生きる人々の逞しさが丁寧に描かれ、世界観の説得力を高めています。
ジャンルとしての評価
複数の勢力が絡み合う群像劇として、少年漫画の枠を超えた複雑さと深さを持つ作品です。善悪の境界が曖昧な登場人物たちの思惑が交錯する展開は、読者に多角的な視点を提供し、単純な勧善懲悪を超えた現実的な人間関係の複雑さを描いています。特にプロの暗殺者同士の戦いという設定は、技術的な完成度と心理的な駆け引きを両立させ、バトル漫画としての新しい可能性を示しています。
総合評価
★★★★★ 5/5 ヨークシン編の中でも特に緊迫感と完成度の高いエピソードが詰まった傑作巻です。脱出劇からプロ同士の頂上決戦まで、あらゆる要素が最高レベルで表現されており、HUNTER×HUNTERの真価を余すことなく発揮しています。特にシルバ・ゼノ対クロロの戦いは、シリーズ中でも屈指の名勝負として多くの読者に愛され続けている名場面です。
こんな人におすすめ
- プロ同士の高レベルな戦闘を楽しみたい方
- 複雑で多層的な人間関係に興味がある方
- 機転と連携を活かした脱出劇を好む方
- 世界観の深さと設定の緻密さを重視する方