作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 35
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2018年2月
巻数: 第35巻
あらすじ
船内で念獣が動き出し、クラピカたちを襲います。警護の大部分を失う絶望的な状況の中、3人の王子からワブル王子への接触があります。クラピカはどの王子との接触がワブルの生存への道なのかを必死に判断しようとします。
各王子の計略が入り乱れる中、ついに王子の中から最初の犠牲者が出てしまいます。
王位継承戦の恐ろしさが現実のものとなり、デスゲームが本格的に始動する緊迫の一冊です。
見どころ
念獣による無差別攻撃の恐怖
船内で各王子の念獣が活動を始め、クラピカたちを襲う展開は、この巻最大の緊張場面です。王子本人も制御できない念獣による攻撃は、従来の戦闘とは全く異なる恐怖を読者に与えます。特に念獣が無意識に発動されるため、攻撃者も被害者も状況を完全に把握できないという設定は、予測不可能な戦場の混乱を見事に表現しています。クラピカたちが次々と倒れていく様子は、読者にも強い緊張感を与える効果的な演出です。
警護チーム壊滅の絶望的状況
ワブル王子の警護チームが短時間で11人から2人まで減ってしまう展開は、王位継承戦の過酷さを如実に表しています。プロのハンターたちでさえ、この特殊な状況では生き残ることが困難であることが示され、クラピカの置かれた立場の厳しさが浮き彫りになります。特に仲間を失っていくクラピカの心境の変化は、彼の精神的な成長と責任感の重さを表現した重要な要素となっています。
第12王子モモゼの死という衝撃
王子の中から初めての犠牲者として第12王子モモゼが殺害される展開は、王位継承戦が単なる政治的駆け引きではなく、本当の死のゲームであることを読者に突きつけます。比較的無害だった王子の死は、誰もが標的になり得ることを示しており、物語の緊張感を一気に高める効果的なショックとなっています。この事件により、他の王子たちも本格的な警戒態勢に入ることになります。
3人の王子からの接触とクラピカの判断
第1王子ベンジャミン、第2王子カミーラ、第3王子チョウライからワブル王子への接触があり、クラピカは困難な判断を迫られます。それぞれの王子の真意を探り、どの選択がワブルの生存に最も有利かを分析する過程は、クラピカの洞察力と判断力が試される重要な場面です。政治的な駆け引きと生存戦略が複雑に絡み合う状況で、最善の選択を見つけようとするクラピカの苦悩は読者の心を打ちます。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の緊張感演出技術が特に光る巻です。念獣という見えない脅威による攻撃を、キャラクターの困惑と恐怖を通じて読者にも実感させる手法は非常に効果的です。また、大量のキャラクターが登場する複雑な状況を、読者が理解しやすいよう整理して提示する構成力も見事です。特にモモゼの死を巡る各勢力の反応を通じて、王位継承戦の全体像を浮かび上がらせる技術の高さが印象的です。
ジャンルとしての評価
サバイバルサスペンスとしての完成度が非常に高い作品です。単純な力と力のぶつかり合いではなく、情報戦、心理戦、政治的駆け引きが複雑に絡み合うことで、読者により知的な楽しさを提供しています。特に見えない敵との戦いという設定は、ホラー要素も含んだ新しいタイプのバトル漫画として、ジャンルの可能性を大きく広げる意欲作となっています。
総合評価
★★★★☆ 4/5 王位継承戦の恐ろしさが本格的に現実のものとなった重要な巻です。念獣による攻撃、警護チームの壊滅、王子の死という衝撃的な展開が続き、読者を最後まで引き込む緊迫した構成となっています。特にクラピカの置かれた絶望的状況と、それに立ち向かう彼の意志の強さは、キャラクターの成長を感じさせる印象深い内容となっており、暗黒大陸編の中核を担う重要な一冊です。
こんな人におすすめ
- 緊迫したサバイバルサスペンスを楽しみたい方
- 見えない敵との戦いに興味がある方
- 政治的駆け引きと生存戦略を重視する方
- クラピカの成長と葛藤を追いたい方