作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 16
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2002年12月
巻数: 第16巻
あらすじ
グリードアイランド攻略が本格化する中、ゲンスルー組とツェズゲラ組の緊迫した交渉が始まります。
一方、ゴンとキルアは「一坪の海岸線」カード入手のため、レイザーと「14人の悪魔」との戦いに挑みます。
ゴレイヌと組んでの再挑戦では、仲間を探す過程でヒソカと再会を果たし、ツェズゲラとも合流。
ついに本格的なドッジボール勝負が開始され、レイザーの圧倒的な実力が明らかになる激闘の一冊です。
見どころ
ゲンスルー対ツェズゲラの頭脳戦
この巻冒頭の見どころは、グリードアイランド攻略を巡るゲンスルーとツェズゲラの駆け引きです。両者ともゲームクリアに必要なカードをほぼ揃えている状況で、互いの手の内を探り合う心理戦が展開されます。特にゲンスルーの爆弾能力を使った威圧と、ツェズゲラの冷静な対応の対比は、それぞれの戦略家としての資質を表現した名場面となっています。
レイザーと14人の悪魔の圧倒的存在感
レイザー率いる「14人の悪魔」は、グリードアイランドの中でも最強クラスの敵として登場します。レイザーの放出系念能力によって作り出された14体の念獣は、それぞれが独特の個性と強さを持っており、ゲーム内NPCの域を超えた脅威として描かれています。特に彼らとの初戦での圧倒的な実力差は、ゴンたちにとって大きな壁として立ちはだかり、読者にも強烈な印象を与えます。
ヒソカとの再会と意外な協力関係
ドッジボールのメンバーを探す過程でのヒソカとの再会は、物語に新たな展開をもたらします。通常は敵対関係にあるヒソカが、ゲームクリアという共通の目標のために協力する姿は、彼の複雑な性格と実利的な判断力を示す興味深い展開です。また、ヒソカの参加により、ドッジボール戦の戦力バランスが大きく変化することも、読者の期待を高める重要な要素となっています。
ドッジボール戦の戦略的な面白さ
レイザーとのドッジボール勝負は、単純な球技を超えた高度な念能力バトルとして描かれます。各プレイヤーの能力特性を活かした戦術、コート上での位置取り、そしてボールに込められる念の攻防など、スポーツと念能力戦が見事に融合した独創的なバトル形式となっています。特にゴレイヌの「ブラックゴレイヌ」能力の戦術的活用は、知略を重視する展開として印象深く描かれています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の創造性と構成力が特に光る巻です。ドッジボールという身近なスポーツを念能力バトルに昇華させる発想力は独創的で、ルール説明から戦術的な駆け引きまで、読者が理解しやすく楽しめるよう緻密に計算されています。また、複数のキャラクターの思惑が交錯する複雑な状況を、分かりやすく整理して提示する構成技術も秀逸です。戦闘シーンでは動きの表現も巧みで、スピード感と迫力を両立させています。
ジャンルとしての評価
スポーツ要素と超能力バトルを融合させた革新的な作品として、ジャンルの新しい可能性を示しています。従来のバトル漫画の枠組みを超え、ゲームのルール内での戦略性を重視することで、読者により知的な楽しさを提供しています。また、敵味方の境界が曖昧な状況での一時的な協力関係など、人間関係の複雑さも巧みに表現されており、エンターテイメント作品としての完成度を高めています。
総合評価
★★★★☆ 4/5 レイザーとのドッジボール戦という独創的なバトル形式の導入により、HUNTER×HUNTERの創造性が新たな高みに達した重要な巻です。戦略性とエンターテイメント性を高いレベルで両立させ、グリードアイランド編の中でも特に印象深いエピソードとして記憶に残る構成となっています。ヒソカとの再会や複雑な人間関係の描写も含め、多面的な魅力を持つ優秀な一冊です。
こんな人におすすめ
- スポーツ要素を含む独創的なバトルを楽しみたい方
- 戦略性と知略を重視する展開を好む方
- 敵味方を超えた一時的な協力関係に興味がある方
- 複雑なゲームシステムと駆け引きを求める方