ブルーピリオド 12巻 レビュー：500枚ドローイングの挑戦！八虎の迷いと新たな出会い

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第12巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2022年5月
巻数： 第12巻

あらすじ

藝大2年目を迎えた矢口八虎は、これまでの課題や講評で感じた自分の才能や大学への疑問と不安に悩まされています。美術への情熱が曇ったまま道に迷う八虎は、500枚ドローイングという課題に取り組み、電車内で他人をひたすら描き続けます。
しかし「藝大に来てまで自分の中で全て完結させるのか？」という問いかけを受け、さらに深い迷いに陥ることになります。

見どころ

八虎の深い迷いと自己問答

第12巻では、藝大2年目を迎えた八虎の内面的な葛藤が深く掘り下げられています。受験時代の明確な目標を失い、自分の才能や大学での学びに疑問を抱く八虎の姿は、多くの大学生が経験する普遍的な悩みとして描かれています。美術への情熱が曇ったまま迷い続ける八虎の心境は、読者にも深い共感を呼び起こします。

500枚ドローイングという課題

電車内で他人を描き続ける500枚ドローイングという具体的な課題を通じて、八虎の制作に対する姿勢が問われます。この単調にも思える作業の中で、八虎が何を見つけ、何を学ぶのかが重要なポイントとなっています。日常的な観察と描写を通じた技術向上の過程が、リアルな美術教育の一面として描かれています。

「自分の中で完結させるのか」という問い

教授からの「藝大に来てまで自分の中で全て完結させるのか？」という問いかけは、八虎にとって痛烈な指摘となります。この問いは、芸術表現における他者との関わりや、社会性の重要さを示唆しており、八虎の今後の方向性を決める重要な転換点として機能しています。個人的な表現と社会的な意味の関係性について考えさせられる場面です。

新たな展開への予感

巻末にかけて、八虎の迷いがさらに深まる一方で、新たな出会いや展開への期待も高まってきます。これまでの学習方法や制作姿勢に疑問を持った八虎が、どのような変化を遂げるのか、次巻への期待を大いに高める構成となっています。八虎の成長過程の重要な節目として位置づけられる内容です。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の心理描写の技術が特に際立つ巻です。八虎の内面的な葛藤や迷いを、表情や独白、行動を通じて繊細に表現されています。また、500枚ドローイングという単調な作業の中にも、八虎の心境変化を織り込む構成力は見事です。読者が八虎の迷いを共有できるような演出が効果的に使われています。

ジャンルとしての評価

青春漫画・成長漫画として非常にリアリティのある内容です。大学生活の中で経験する自己探求や将来への不安といった普遍的なテーマを、美術という専門分野を通じて深く掘り下げています。単純な成功談ではなく、迷いや挫折も含めた等身大の成長過程を描いた点で、現代的で共感しやすい作品となっています。

総合評価

★★★★☆ 4/5 八虎の内面的な成長過程を深く掘り下げた重要な巻です。明確な答えのない迷いや葛藤を丁寧に描くことで、読者にも深い印象を与えます。次巻での八虎の変化への期待を高める、転換点としての役割を果たす充実した内容です。

こんな人におすすめ

• 大学生活での自己探求に悩んでいる方
• 将来の方向性について迷いを抱えている方
• 芸術表現の社会性について考えたい方
• キャラクターの内面的成長を重視する方