作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 37
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2022年11月
巻数: 第37巻
あらすじ
クラピカは船内の不穏な鳴動を感知しながらも、念講習会を次の段階へと進めます。その間に他の王子たちも本格的に動き出し、王位継承戦がさらに激化していきます。一方、下層階ではヒソカを捜索する幻影旅団の活動に、船内のマフィアたちが巻き込まれて三つ巴の抗争が始まります。政治的駆け引き、超能力バトル、そして組織間の抗争が複雑に絡み合う、混沌とした状況が展開される。
見どころ
クラピカの念講習会次段階への発展
クラピカによる念講習会が新たな段階に入り、参加者たちの念能力開発が本格化します。各王子の護衛たちが念を学ぶ過程で、それぞれの個性や潜在能力が明らかになっていく展開は興味深い内容です。特にクラピカの指導技術と、生徒たちの成長過程を通じて、念能力システムの奥深さが改めて表現されています。また、講習という建前の裏で情報収集を行うクラピカの巧妙さも印象的です。
王子たちの本格的な動きと策略の応酬
各王子たちがそれぞれの思惑に基づいて本格的に行動を開始し、王位継承戦の複雑さが一気に増します。政治的な駆け引き、念獣を使った攻撃、直接的な暗殺計画など、様々な手段が同時に展開される様子は、この継承戦の多面性を見事に表現しています。特に年上の王子たちの老練な策略と、年下の王子たちの予測不可能な行動の対比が、物語に深い面白さを与えています。
幻影旅団によるヒソカ捜索の本格化
幻影旅団のメンバーたちが船内でヒソカの捜索を本格化させる展開は、王位継承戦に新たな混乱要素を加えます。旅団の高い戦闘能力と組織力が、船内の勢力バランスに与える影響は計り知れません。特にノブナガ、フェイタン、フィンクスらベテランメンバーの活動は、既に複雑な状況をさらに予測不可能なものにしています。
マフィア三つ巴抗争の勃発
船の下層階では、複数のマフィア組織が幻影旅団の活動に巻き込まれて三つ巴の抗争が始まります。シュウ=ウ一家、シャ=ア一家、エイ=イ一家という三大マフィアと旅団の関係は、単純な敵対関係ではなく、それぞれの利害が複雑に絡み合った状況となっています。この抗争により、船内の治安が一層悪化し、王位継承戦にも間接的な影響を与えることになります。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の群像劇構成技術が最高レベルで発揮された巻です。王子たち、護衛、旅団、マフィアという多数の勢力が同時に活動する複雑極まりない状況を、読者が理解できるよう巧みに整理して提示しています。また、それぞれのキャラクターの動機と行動原理を明確に描き分けることで、混乱の中にも一貫した論理性を保っています。特に限られたページ数の中で大量の情報を効率的に伝える技術は圧巻です。
ジャンルとしての評価
複数ジャンルの要素を高次元で融合させた、現代漫画の到達点の一つと言える作品です。政治サスペンス、超能力バトル、組織犯罪、ミステリーという異なるジャンルの魅力を一つの作品内で同時に楽しめる構成は、読者により豊富な読書体験を提供しています。特に大人の読者も満足できる複雑さと深さを持ちながら、エンターテイメント性を失わないバランス感覚は、ジャンルの新たな可能性を示しています。
総合評価
★★★★☆ 4/5
王位継承戦の本格化により、HUNTER×HUNTERの複雑さと面白さが極限まで高まった重要な巻です。多数の勢力が同時に活動する混沌とした状況でありながら、それぞれの行動に明確な動機と論理があることで、読者は混乱することなく物語を楽しめる構成となっています。特に政治的駆け引きと武力行使が絶妙にバランスされた展開は、暗黒大陸編の真価を示す内容として高く評価できます。
こんな人におすすめ
- 複数勢力が入り乱れる複雑な物語を楽しみたい方
- 政治的駆け引きと組織間抗争に興味がある方
- 幻影旅団の新たな活動を追いたい方
- 多層的で知的な漫画作品を求める方