HUNTER×HUNTER 27巻レビュー:王の名前をかけた駆け引き、ネテロの最期

HUNTER×HUNTER27 少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 27
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2008年12月
巻数: 第27巻

あらすじ

イカルゴブロヴーダの激戦が決着し、モラウプフに逃げられてしまいます。ユピーとの戦いはナックルモラウの連携で新たな局面を迎え、シャウアプフゴンピトーのもとへ急行します。そして最大の見どころであるネテロと王メルエムの対戦が本格化。ネテロが王の名前を材料にした心理的駆け引きを仕掛け、王の内面に変化をもたらします。各戦線で決着に向かう中、物語は大きな転換点を迎える重要な一冊です。

見どころ

ネテロと王の名前をめぐる心理戦

この巻最大の見どころは、ネテロが王メルエムの名前を材料にした心理的駆け引きを展開することです。王が自分の名前を知らないことを突き、その動揺を戦術的に利用するネテロの老獪さは圧巻です。特に「王の名はメルエム」と告げる場面は、王の内面に深い衝撃を与える重要な転換点となっています。この心理戦により、単純な力勝負を超えた深い人間ドラマが展開され、読者に強い印象を残します。

イカルゴの成長と友情への想い

イカルゴブロヴーダの戦いは、イカルゴの精神的成長を表現した感動的な展開です。キルアとの友情を胸に、同族であるブロヴーダと戦う彼の心境は複雑でありながらも、友を守るという強い意志に満ちています。特に「友達を守る」という純粋な動機が、彼に勝利をもたらす展開は、友情の力をテーマにした美しいエピソードとして印象深く描かれています。

ユピー対ナックル・モラウの連携戦

ユピーナックルモラウの戦いは、チームワークの重要性を示す戦術的な戦闘として展開されます。ナックルの「天上不知唯我独損」とモラウの「紫煙拳」の組み合わせは、個々の能力の限界を連携によって補完する見事な戦術です。特にユピーの圧倒的な力に対して、知恵と連携で対抗する人間側の戦略性は、弱者が強者に挑む際の理想的な戦い方として描かれています。

プフの逃走と状況の複雑化

シャウアプフがモラウから逃走し、ゴンとピトーのもとへ向かう展開は、物語の緊張感を大幅に高める重要な転換点です。プフの知性と狡猾さが際立つ場面であり、王を守ろうとする護衛としての忠誠心も同時に表現されています。この逃走により、各戦線の状況がさらに複雑化し、予測不可能な展開への期待を高める効果的な演出となっています。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の心理描写と戦術表現の技術が特に発揮された巻です。ネテロと王の心理戦では、表情の微細な変化と内面の動揺が見事に描き分けられており、読者が両者の心境を深く理解できる構成となっています。また、複数の戦線を同時進行で描く構成力も秀逸で、各キャラクターの状況を整理して提示する技術の高さが光ります。戦闘シーンでは、能力の特性を活かした戦術的な攻防が詳細に描かれています。

ジャンルとしての評価

バトル漫画における心理戦と物理戦の融合という点で、ジャンルの新境地を開拓した作品です。単純な力の勝負だけでなく、相手の精神的な弱点を突く戦術や、仲間との連携による戦略的思考が重要な要素となっており、読者により知的な楽しさを提供しています。特に名前という個人のアイデンティティに関わる要素を戦術に組み込む発想は、従来のバトル漫画にはない革新的なアプローチとして評価できます。

総合評価

★★★★★ 5/5 ネテロと王の心理戦を中心に、各戦線での重要な展開が見事に描かれた傑作巻です。特に王の名前をめぐる駆け引きは、HUNTER×HUNTERの知的な戦闘描写の集大成として、読者に強烈な印象を残します。イカルゴの成長、連携戦術の妙、そして複雑化する状況など、あらゆる要素が最高レベルで表現された、シリーズ中でも特に印象深い一冊です。

こんな人におすすめ

  • 心理戦と知的な駆け引きを重視する方
  • キャラクターの精神的成長に興味がある方
  • チームワークと戦術的思考を楽しみたい方
  • アイデンティティをテーマにした深い物語を求める方
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