来世は他人がいい 5巻 レビュー：大阪大騒動勃発！謎の男・アザミ登場で物語が新局面へ

作品概要

タイトル： 来世は他人がいい
作者： 小西明日翔
出版社： 講談社（アフタヌーン）
発売日： 2021年5月
巻数： 5巻 ※既刊8巻（2023年10月現在）

あらすじ

舞台は染井吉乃の故郷・大阪。平穏だった日常は一変し、大騒動が勃発します。吉乃と深山霧島、そして鳥葦翔真の3人が手を取り合ってこの騒動を鎮圧できるのか？新たに登場する謎の男アザミの正体、吉乃の巧妙な計画、そして思いがけず明かされる霧島の本心。怒涛の展開が待ち受ける第5巻で、物語はさらなる深みへと突入していきます。

見どころ

謎の新キャラクター「アザミ」の登場

5巻最大の注目ポイントは、謎に包まれた男アザミの初登場です。彼の素顔と真の目的が徐々に明らかになる過程は、読者に強烈な印象を残します。アザミという男がもたらす新たな脅威と、それに対する吉乃たちの反応は、物語に予測不能な展開をもたらしています。彼の存在により、これまでの人間関係に新たな緊張感が生まれ、読者の興味を大いに引きつけます。

大阪を舞台にした大規模な騒動

故郷・大阪で発生する大騒動は、これまでの小規模な事件とは規模が異なります。関西圏の極道社会を舞台にした展開により、吉乃の地元での人脈や影響力が明らかになり、彼女の別の一面を見ることができます。慣れ親しんだ土地での出来事だからこそ、吉乃の判断力と行動力がより鮮明に描かれています。

三者協力の新たな関係性

吉乃、霧島、翔真の3人が「手を取り合って」騒動に立ち向かうという展開は、これまでの複雑な三角関係に新たな側面をもたらします。それぞれが持つ異なる能力と個性を活かし、共通の目標に向かって協力する姿は、キャラクター同士の絆の深さを表現しています。この協力関係が今後の物語にどのような影響を与えるのかも見どころです。

吉乃の戦略的思考と成長

5巻では吉乃の「計画」が重要な役割を果たします。これまで以上に戦略的な思考を見せる彼女の成長ぶりは目を見張るものがあります。極道の孫として生まれ育った血筋が、緊急事態において如何なく発揮される場面は圧巻です。単なる女子高生から、状況を的確に判断し行動できる強い女性への変貌が印象的に描かれています。

霧島の意外な本心の露呈

これまで掴みどころのなかった霧島の「本心」が思いがけず明かされる展開は、読者に大きな衝撃を与えます。狂気的で予測不能な彼の内面に潜む真の感情が垣間見えることで、霧島というキャラクターに対する理解が深まります。この本心の露呈により、吉乃との関係性にも微妙な変化が生じる可能性を秘めています。

作者の特色・技法

小西明日翔先生の構成力が特に光る巻です。複数のキャラクターを同時に動かしながら、それぞれの個性と役割を明確に描き分ける技術は見事です。また、大阪という地域色を活かした背景描写や台詞回しにより、物語にリアリティと親しみやすさを与えています。緊迫したシーンとコミカルなシーンのメリハリも絶妙で、読者を最後まで飽きさせません。

ジャンルとしての評価

極道ラブストーリーとして、5巻では恋愛要素よりもアクション・サスペンス要素が強化されています。新キャラクターの導入と大規模な騒動により、物語の世界観がさらに拡張され、読者により深い没入感を提供しています。ジャンルの枠を超えた総合エンターテインメント作品としての完成度が高まった巻といえるでしょう。

総合評価

★★★★☆ 4/5

新キャラクター・アザミの登場により物語に新たな展開が生まれ、読者の期待感を大いに高める巻となっています。吉乃の成長、霧島の本心の露呈、そして3人の協力関係など、キャラクター面での深みが増している点も評価できます。「怒涛の展開」という表現がぴったりの、スピード感溢れる構成で最後まで一気に読ませる力があります。

こんな人におすすめ

• 新キャラクターの登場による物語の変化を楽しみたい方
• 大阪の地域色や関西弁の雰囲気がお好きな方
• キャラクター同士の協力関係や絆の深化に興味がある方
• スピード感のある展開とサスペンス要素を求める読者