BEASTARS 9巻 レビュー：食殺犯ついに判明！長期間の謎がついに解決へ

作品概要

タイトル： BEASTARS 9巻
作者： 板垣巴留
出版社： 秋田書店（少年チャンピオン・コミックス）
発売日： 2018年10月
巻数： 第9巻

あらすじ

何者かに襲撃され敗北したレゴシは、強くなるためにゴウヒンのもとで修業の毎日を送ります。肉座禅を経て肉食の本能を克服し、食肉中毒者との捕獲劇で手足を使う戦闘スタイルを確立させました。
そんなある日、テム食殺犯を追うレゴシは、ついに事件の真相に迫ります。演劇部内で起きた衝撃的な事件をきっかけに、長い間の謎だった食殺事件の犯人がついに明らかになります。

見どころ

演劇部内での衝撃的な事件

演劇部の部活前のストレッチ中に起こった衝撃的な事件が物語の転換点となります。アリクイのキビの腕をクロヒョウのタオが力加減を誤ってもいでしまうという凄惨な事故は、種族間の力の差という根深い問題を浮き彫りにし、読者に強いインパクトを与えます。

レゴシの修行の成果と成長

ゴウヒンのもとでの厳しい修行により、レゴシの戦闘能力と精神力が大幅に向上した様子が描かれています。肉座禅によって本能を制御する技術を身につけ、新たな戦闘スタイルを確立した彼の成長ぶりは、読者に大きな満足感を与えます。

食殺犯の正体がついに判明

1巻から続いていたテム食殺事件の犯人がついに明らかになります。その正体は意外にも身近な存在で、犯人の動機や背景が丁寧に描かれることで、単純な悪役ではない複雑な人物像が浮かび上がります。事件の真相は読者に深い衝撃を与えます。

種族間の力の差と苦悩の描写

キビとタオの事故を通じて、肉食獣と草食獣の間に存在する絶対的な力の差が改めて示されます。両者の苦悩や、それを乗り越えようとする意志の描写が非常に繊細で、作品のテーマである「共存」の困難さを深く掘り下げています。

作者の特色・技法

画力：事故シーンでの生々しい表現と、その後の心理的な描写の対比が見事に描き分けられています。キャラクターの感情の変化を表情で繊細に表現する技術がさらに向上しています。

演出：長期間続いた謎の解明という重要な場面で、読者の期待に応える演出技法が光っています。真相が明かされる際の間の取り方や、情報の提示順序が計算され尽くしています。

ジャンルとしての評価

長期間続いたミステリー要素に決着をつけながら、新たな展開への布石も用意された構成力の高い巻です。事件解決という区切りを迎えながらも、キャラクターの成長や種族間の問題という根本的なテーマは継続され、物語の深みが増しています。

総合評価

★★★★★ 5/5
シリーズの核となっていた食殺事件の真相がついに明かされる記念すべき巻です。犯人の正体と動機は予想を超える衝撃的な内容で、読者の期待を裏切らない見事な展開となっています。レゴシの成長、演劇部内での事件、そして事件解決という多重構造の物語が巧妙に組み合わされた、シリーズ屈指の名巻と言えるでしょう。

こんな人におすすめ

• 長期間の謎の解決を楽しみにしていた読者
• キャラクターの成長過程を丁寧に見たい方
• 種族差による社会問題に興味がある読者
• 衝撃的な真実の発覚を体験したい方