ブルーピリオド 4巻 レビュー：藝大受験本番の緊迫！プレッシャーと体調不良に立ち向かう八虎

作品概要

タイトル： ブルーピリオド 第4巻
作者： 山口つばさ
出版社： 講談社（アフタヌーンKC）
発売日： 2019年2月
巻数： 第4巻

あらすじ

ついに東京藝大の受験本番を迎えた矢口八虎。倍率30倍以上という超難関の一次試験では、独自のアイデアで課題に挑み自分なりの表現を成功させます。
しかし二次試験の「ヌードデッサン」課題では、極度のプレッシャーと体調不良が重なり、制作スピードが追いつかない厳しい状況に直面することになります。

見どころ

藝大受験の現実的な描写

第4巻では、東京藝大受験の実態が非常にリアルに描かれています。一次試験と二次試験の具体的な内容や、受験会場の緊張感、受験生たちの様子など、作者の実体験に基づいた詳細な描写が印象的です。「奇想天外な課題」と言われる藝大の試験問題の実例や、年によって大きく異なる課題内容など、美大受験の特殊性が手に取るように分かります。

八虎の独創性と表現力

一次試験では、八虎が課題に対して独自のアプローチで挑む姿が描かれます。他の受験生とは異なる視点や発想力を活かした作品制作は、八虎の成長と個性を感じさせる重要な場面です。技術的な完璧さだけでなく、「何を伝えたいか」という表現への意識が高まっている八虎の進歩が如実に表れています。

極限状態での精神的・肉体的な試練

二次試験での「ヌードデッサン」課題は、八虎にとって最大の試練となります。極度のプレッシャーと体調不良という二重の困難に直面し、制作スピードが追いつかない状況は、読者も手に汗握る緊迫感を与えます。それでも諦めずに最後まで描き続けようとする八虎の執念は、受験生なら誰もが共感できる普遍的な体験として描かれています。

受験を通じた人間的成長

単なる技術的な試験ではなく、自分自身と向き合う場として受験が描かれています。八虎が試験を通じて自分の限界と可能性を同時に発見していく過程は、青春期の重要な成長体験として感動的に表現されています。結果よりもプロセスに価値を見出そうとする八虎の姿勢は、多くの読者に勇気を与えます。

作者の特色・技法

山口つばさ先生の演出力が特に光る巻です。受験会場の緊張感や八虎の心理状態を、コマ割りや表情、背景の使い方で巧みに表現されています。特に体調不良時の八虎の描写は、読者もその苦しさを共有できるほどリアルで、作者の表現技術の高さを実感させます。また、実際の藝大受験の詳細な再現により、作品の説得力が格段に向上しています。

ジャンルとしての評価

受験漫画・青春漫画として非常に完成度の高い内容です。美大受験という特殊な舞台を通じて、プレッシャーや挫折、それでも諦めない意志といった普遍的なテーマを描いており、幅広い読者に響く構成となっています。単なる合格・不合格の結果よりも、挑戦することの意義を重視した価値観は、現代の教育的視点からも評価できます。

総合評価

★★★★☆ 4.5/5 藝大受験編のクライマックスとして、非常に緊迫感のある展開が続く重要な巻です。八虎の成長の集大成であると同時に、新たな困難への直面でもあり、読者の感情を大きく揺さぶる内容となっています。受験経験者はもちろん、何かに真剣に挑戦した経験のある人なら誰でも感動できる、普遍性の高い優秀作品です。

こんな人におすすめ

• 受験や就活などの重要な試験を控えている学生
• プレッシャーの中でも諦めない主人公を応援したい方
• 美大受験の実態について詳しく知りたい方
• 困難に立ち向かう青春ストーリーが好きな方