作品概要
タイトル: HUNTER×HUNTER 33
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2017年6月
巻数: 第33巻
あらすじ
ビヨンドの暗黒大陸への「狩り」の依頼と、亡きネテロからの秘密指令にハンター協会が揺れています。ビヨンドに付いて暗躍するパリストンのもとにジンが現れ、新たな駆け引きが始まります。
一方、十二支んの欠員補充としてレオリオとクラピカが加入することになります。
それぞれの思惑が複雑に絡み合う中、暗黒大陸という未知の領域への挑戦が本格的に動き出す転換点となる重要な一冊です。
見どころ
ビヨンド・ネテロの衝撃的な正体
この巻最大の驚きは、ビヨンドがネテロの息子であることが明かされることです。偉大な父を持つ息子として、自分なりの方法で暗黒大陸に挑戦しようとする彼の動機は複雑で興味深いものです。特に父親の遺した制約と自分の野望の間で葛藤する姿は、単純な悪役ではない深みのあるキャラクターとして描かれています。暗黒大陸への執念と、それを阻止しようとしたネテロとの父子の確執は、物語に重層的な深みを与えています。
パリストンとジンの頭脳戦開始
パリストンとジンという二人の策略家が本格的に対峙する展開は、知略戦好きには堪らない見どころです。パリストンの巧妙な政治的手腕と、ジンの自由奔放でありながら計算された行動の対比は、それぞれのキャラクターの魅力を際立たせています。特に二人の会話には表面的な言葉の裏に複数の意味が隠されており、読者は両者の真意を探りながら楽しむことができる知的なやり取りとなっています。
クラピカとレオリオの十二支ん加入
クラピカとレオリオが十二支んに加入することで、物語の主要キャラクターたちが再び集結する期待感が高まります。クラピカの加入は、彼が抱える緋の目を巡る復讐譚と暗黒大陸編が密接に関わることを示唆しており、物語の連続性を保つ重要な要素となっています。レオリオの加入は、彼の政治的センスと人望が認められた証であり、キャラクターの成長を感じさせる展開です。
暗黒大陸の謎と危険性の示唆
暗黒大陸に関する情報が徐々に明かされることで、この未知の領域の危険性と魅力が読者に伝わってきます。過去の探検隊の全滅や、持ち帰られた災厄などの情報は、これから始まる冒険の困難さを予感させます。特に「五大災厄」の存在は、キメラアント以上の脅威が待ち受けていることを示唆しており、読者の不安と期待を同時に煽る効果的な設定となっています。
作者の特色・技法
冨樫義博先生の世界観拡張技術が特に発揮された巻です。既存のキャラクターや設定を活かしながら、暗黒大陸という全く新しい要素を自然に導入する構成力は見事です。また、政治的な駆け引きと冒険譚の要素を巧みに組み合わせることで、多層的な面白さを提供しています。キャラクターの心理描写も深く、特にビヨンドの複雑な動機や、パリストンとジンの腹の探り合いは、表情と仕草だけで多くを語る技術の高さを見せています。
ジャンルとしての評価
冒険漫画に政治サスペンスの要素を組み合わせた革新的な作品として評価できます。従来の「新しい場所に行く」という単純な冒険譚ではなく、なぜ行くのか、誰が行くのか、どのような準備が必要なのかという複雑な前段階を丁寧に描くことで、より現実的で説得力のある冒険物語を構築しています。特に国際政治や組織運営の要素を含むことで、大人の読者も満足できる高度な内容となっています。
総合評価
★★★★☆ 4/5 暗黒大陸編の導入部として、新しい冒険への期待を最大限に高める優秀な巻です。ビヨンドという新たな重要キャラクターの登場、主要メンバーの再集結、そして未知の領域への挑戦という要素が巧みに組み合わされ、読者を次の展開へと強く引き込む構成となっています。HUNTER×HUNTERの新章の可能性を感じさせる、期待に満ちた重要な転換点となる一冊です。
こんな人におすすめ
- 新しい冒険と世界観の拡張に期待する方
- 政治的な駆け引きと知略戦を楽しみたい方
- 主要キャラクターの再集結に興味がある方
- 複雑な人間関係と組織運営を描いた物語を求める方