HUNTER×HUNTER 28巻レビュー:ネテロの究極の覚悟、薔薇の恐怖

HUNTER×HUNTER28 少年漫画

作品概要

タイトル: HUNTER×HUNTER 28
作者: 冨樫義博
出版社: 集英社(ジャンプコミックス)
発売日: 2009年12月
巻数: 第28巻

あらすじ

キルアパームイカルゴウェルフィンの戦いが決着し、ついにネテロ対王メルエムの戦いも終結を迎えます。限界に達したネテロが最後の手段である「貧者の薔薇」を発動し、壮絶な最期を遂げます。
瀕死の王を救うため、プフユピーは自らの身を犠牲にして王に肉体を分け与えます。
そしてコムギの治療が終了し、王は彼女に対して印象的な言葉を投げかけます。人類最強の男の死と王の復活を描く、感動と衝撃の一冊です。

見どころ

ネテロの「貧者の薔薇」と究極の自己犠牲

この巻最大の衝撃は、ネテロが「貧者の薔薇」という核爆弾級の兵器を自らの心臓に仕込み、最後の攻撃手段として発動することです。人類を守るために自らの命を投げ出すネテロの覚悟は、まさに究極の自己犠牲として描かれています。特に「安らかに眠れ 王よ」という最期の言葉は、敵に対する敬意と人類への愛を表現した名台詞として、多くの読者の心に深く刻まれています。

プフとユピーの王への献身

瀕死の王メルエムを救うため、プフユピーが自らの肉体を分け与える場面は、忠誠心の極致を表現した感動的なエピソードです。王への絶対的な忠誠と愛情から、自分の命を惜しみなく捧げる二人の姿は、主従関係を超えた深い絆を感じさせます。特に彼らの犠牲により王が復活する過程は、生命の神秘と愛の力を象徴的に表現した美しい場面となっています。

コムギの治療完了と王の変化

コムギの治療が完了し、王が彼女に「お前も俺を信じてくれるだろ?ピトー!」と語りかける場面は、王の内面の変化を如実に表現した重要なシーンです。この時点で王は、コムギを単なる道具ではなく、かけがえのない存在として認識し始めています。盲目の少女に対する王の接し方の変化は、彼の人間的な成長と愛情の芽生えを感じさせる印象的な展開となっています。

人間性の探求と価値観の転換

この巻全体を通じて描かれるのは、「人間とは何か」「価値ある命とは何か」という根源的な問いです。ネテロの人類への愛、護衛たちの王への忠誠、王のコムギへの特別な感情など、それぞれが異なる形の愛と献身を表現しています。これらの対比により、種族を超えた普遍的な愛情と犠牲の美しさが浮き彫りになり、読者に深い感動を与えています。

作者の特色・技法

冨樫義博先生の感情表現技術が最高潮に達した巻です。ネテロの最期のシーンでは、セリフと表情、そして爆発の描写が完璧に調和し、読者の心に強烈な印象を残します。また、プフとユピーの献身シーンでは、彼らの忠誠心と愛情が言葉ではなく行動を通じて表現され、視覚的にも感動的な構成となっています。コムギと王の微細な表情の変化も、両者の関係性の深化を見事に表現しています。

ジャンルとしての評価

バトル漫画の枠を大きく超えた、文学的価値を持つ傑作として評価できます。単純な勝敗を超え、自己犠牲、愛情、忠誠といった人間の根源的な感情を深く掘り下げることで、読者により深い感動と思索を促しています。特にネテロの最期は、ヒーローの理想的な死に様として、少年漫画の一つの到達点を示していると言えるでしょう。このような深いテーマ性は、ジャンルの可能性を大きく広げる意欲作です。

総合評価

★★★★★ 5/5 ネテロの壮絶な最期と王の復活を描いた、HUNTER×HUNTERの代表的な名作巻です。自己犠牲、忠誠、愛情という普遍的なテーマが最高レベルで表現され、読者に深い感動を与える構成となっています。特に「貧者の薔薇」という衝撃的な展開と、それに続く感動的なエピソードの組み合わせは、漫画史に残る名場面として多くの読者に愛され続けています。

こんな人におすすめ

  • 自己犠牲と英雄的な死を描いた物語を求める方
  • 忠誠心と愛情をテーマにした深い人間ドラマに興味がある方
  • 感動的なクライマックスシーンを重視する方
  • 価値観や人間性について考えさせられる作品を好む方
タイトルとURLをコピーしました