作品概要
タイトル: 光が死んだ夏
作者: モクモクれん
出版社: KADOKAWA(角川コミックス・エース)
発売日: 2025年7月
巻数: 第7巻
あらすじ
光が「ナニカ」とすり替わってから、各地にケガレが増え始めていました。ケガレの蔓延を防ぐため、よしきたちはあの世と繋がる複数の「穴」を閉じるべく動き出します。
向こう側からしか閉じることのできない「穴」。ヒカルは、「ナニカ」から目を逸らさずにいてくれたよしきとの「つながり」を利用して、自身が「穴」を閉じて戻ってくると提案します。
一方、朝子とタナカは、ケガレに穴を閉じてもらうため、ケガレとの交渉に挑みます。
見どころ
本格化する「穴閉じ」作戦
第7巻では「穴閉じ編」が本格始動し、物語は新たな局面を迎えます。あの世と繋がる複数の「穴」を閉じるという具体的なミッションが展開され、これまでとは異なるアクション性の高い展開が描かれます。ケガレの蔓延を防ぐため、よしきたちはあの世と繋がる複数の「穴」を閉じようと動き出す展開は、読者に新鮮な興奮をもたらしてくれます。
二つのアプローチによる並行展開
よしきとヒカルによるアシドリの穴攻略と、朝子とタナカによるウデカリの穴攻略が並行して描かれる構成が秀逸です。異なるコンビによる異なるアプローチが同時進行することで、物語に多層的な面白さが生まれています。特に朝子と田中の即席コンビによる展開は新鮮で、読者に新たな楽しみを提供しています。
「つながり」をテーマにした深い関係性
「だって、おれから目を逸らさんでいてくれたやろ」——ヒカルのこの言葉が示すように、本巻では二人の「つながり」がより重要な意味を持ちます。ナニカから目を逸らさずにいてくれたよしきとの絆を武器として「穴」を閉じに向かうヒカルの決意と覚悟が、読者の心を深く打ちます。
クトゥルフ的コズミックホラーへの発展
物語は段々とクトゥルフ神話的なコズミックホラーの要素を強めており、より壮大で不気味な世界観が展開されています。日常系ホラーから宇宙的恐怖への発展は、作品に新たな深みと恐怖をもたらしています。作者が意図的に取り入れているこの要素は、物語の最終段階にふさわしいスケール感を演出しています。
作者の特色・技法
第7巻では、モクモクれんの漫画家としての技量が最高レベルに達していることが分かります。複数のグループによる並行した行動を混乱なく描き分ける構成力は見事で、読者は迷うことなく物語を追うことができます。作者によると「穴」をふさぎ始めるところから3部構成の最終章に入ったとのことで、物語の完結に向けた着実な歩みが感じられる構成となっています。
ジャンルとしての評価
青春ホラーから出発した本作が、コズミックホラーの要素を取り入れながらも、核心である人間関係と成長の物語を保持し続けている点は特筆すべきものがあります。ジャンルの境界を越えた作品でありながら、一貫したテーマ性を維持している作家の技量は高く評価できます。10巻程度での完結が予想される中で、着実に物語をまとめ上げていく手腕も見事です。
総合評価
★★★★★ 5/5 「穴閉じ編」の本格始動として、期待を上回る完成度を誇る傑作です。並行する複数の展開、深化する人間関係、そしてスケールアップした世界観が見事に融合し、読者を物語世界に完全に没入させてくれます。最終章にふさわしい緊迫感と感動が同居する名巻として、シリーズファンにとって欠かせない一冊となっています。
こんな人におすすめ
- シリーズの最終章を見届けたい方
- より大規模で壮大な展開を求める読者の方
- キャラクター同士の「つながり」に感動したい方
- コズミックホラー要素に興味がある方